サンリオSF文庫。
ハリイ・ハリスンです。
ハリスンの単独長編(スチールラット除く)を読むのは、確か「殺意の惑星」以来。1974年にハヤカワ文庫で出てすぐに読んだはずですので、40年以上前です。
ハリスンは中堅作家と言うべき存在ですが、1940年代黄金時代へのオマージュと、ユーモアSFと、シリアスとを書き分ける多面的で器用な人と言う印象です。
SF史に残るような存在ではなく、ヒューゴー賞を取ったこともありません。ただ、それでいて無視できない実力があるという通好みの作家です。
ちなみに、本作もSF宝石チェックリストから。
某所ではオルタネートヒストリー物の三大傑作の一つと評価されているそうです。
個人的には、そこまでは評価できないかなと思います。
しかし、良く出来ていることは間違いない。
本書の歴史の分岐点は、ナバス・ド・トロサの戦いでキリスト教徒側が負け、結果としてスペインが成立しなかったと言うものです。スペイン無敵艦隊の時代がなかったことから、大英帝国は正史より強力な存在となります。結果として、北米大陸で叛逆者ワシントンの反乱を鎮圧します。
で、本書の主人公はワシントンの末裔である、ガス・ワシントン大尉となります。
大西洋を横断するトンネルを掘るというプロジェクトに、彼はかつてのワシントン首謀者の末裔であることからアメリカ側から掘り進むプロジェクトリーダーとして選ばれるのです。
大昔の本ですからネタばらししてしまいます。
知りたくない人は、ここで読むのを止めてください。
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横断トンネルは完成し、エリザベス女王は記念に北米植民地の独立を認める所で本書は終わります。そして、ワシントンは新国家の初代大統領に立候補するように薦められて終わります。
なるほど、そういうことなのかとニヤリとさせられて終わります。
トンネル掘削プロジェクトも、かなり良い感じに書き込まれていて佳作と呼ぶに十分です。
ハリスンの他の本も近い内に読んでみようかなと思いました。