SFM1989/10号を読む

bqsfgame2017-01-06

確か1989年一式でオークション購入したのだと思う。
気になる短編が載っている号から散発的に読んでいるが、今回は10月号。
森下一仁さんの短編があるので読んでみた。「風のささやき」というタイトルは魅力的だが、内容的にはあまりピンと来なかった。ちょっとシチュエーションアイデアに作者自身が酔っているのかも知れない。
むしろ面白かったのは、当時、まだ日本では無名の新人だったロバート・チャールズ・ウィルスンの「技術の結晶」。
冴えない中年になった成功者の夫が、最新性能の眼球を移植する所から始まる。自分の体の部品を無節操に交換してしまう感覚は、解説にある通りスターリング系のサイバーパンクに通じる所がある。しかし、作者の腕の見せ所は、そうした斬新な世界観や、グロテスク趣味にはなく、むしろ人間の性(さが)の悲しさを淡々と描く所にある。
どうやって、そういうことを可能にしているかは読んでのお楽しみということでネタバレしないで置きましょう。