○いたずらの問題を読む

PKディックの再読です。
1950年代の第3長編。管理社会系ディストピア小説です。
地球は人口過密で、そこに住む貸借権を確保するのは大変。確保したらしたで、居住ブロックごとの定期集会で、互いに密告しあって吊るし上げをするという文化が定着しています。そんな文化が生みだしたのが、ジュブナイルというヤスデのような監視カメラを持って何処にでも進入してくる監視機械。TV放送は、異常に堅苦しい道徳を押し付ける番組を制作して一日中流しています。
主人公はインデペンダントの番組製作会社社長でしたが、上記の政府TV部門の現場総責任者への栄転の話しが転がり込んで来ます。一方で、彼は夜中に国民的英雄の像にいたずらをしてしまい、それがバレたら栄転がなくなる所か地球での居住権も失いかねないというお話しです。
ディックにしては、クリアでストレートな物語ですが、途中でカウンセラーに行ったら騙されて地球外に連れ出されてしまったりするのはディック流です。
リーダビリティが非常に高くて、それなりにディックの個性も出ているのでお薦めできる本だと思います。