☆空中ブランコを読む

bqsfgame2018-04-25

神経科医伊良部シリーズその2です。
これは本当に面白い短編集です。
冒頭の表題作は、飛べなくなった空中ブランコ乗りの話し。自分がフォームを崩しているのに気付けず、相方のキャッチャーによるサーカス内派閥争いの陰謀だと思ってしまうと言うお話し。なかなか考えさせられます。伊良部先生は、今回も患者と遊ぼうとし、なんと空中ブランコに挑戦して成功してしまいます。
第2作のハリネズミは、先端恐怖症になってしまったヤクザの若頭のお話し。もちろん修羅場で恐怖症がばれては沽券に関わります。かくて、秘密裏に伊良部先生の所に通ってくる訳ですが、ヤクザにびびることを知らない伊良部先生のせいで、ますますリズムを崩してしまいます。
義父のヅラは、医学部講師で、教授の娘婿という立場からハメを外せなくなったのに、ハメを突発的に外したくなってしまう衝動に悩む伊良部先生の同級生です。例によって対症療法と称して、交差点の信号機の地名を書き換える悪戯を始めてしまいます。
ホットコーナーは、球界を代表する三塁手が突如イップスに。原因は、若手イケメン三塁手が入団してきたことによる危機感からと言うお話し。空中ブランコに似たお話しですが、こちらの方が明るくて爽快感あります。
女流作家は、流行恋愛小説作家が嘔吐して書けなくなってしまう話し。後輩の若手作家のデビューによるプレッシャーなので、ホットコーナーに似た話しです。流行作家と編集部の現代の歪な関係をストレートに描いた作品。