正欲を見る

 映画館です。新年早々に見るには、もう少しエンタメよりのものを選びたかったのですが、適当な時間に始まるものがこれだったので新垣結衣だし‥。

 高校生の佐々木(磯村)と夏月(新垣)は、ある日、校舎の裏の水道蛇口が故障して噴水状態になるのを一緒に体験して親近感を持つ。しかし、佐々木の両親が事故死して彼は転校してしまう。

 夏月は地元に出来たイオンの寝具売場で勤務するようになるが人付き合いの悪い彼女は職場で孤立する。そんな彼女に唯一声を掛ける那須徳永えり)だったが、夏月はそんな彼女も「うっせえ」と拒絶して孤立を深めていく。

 そんなある日、通勤途上で誰もいないはずの佐々木の実家に電気が点いているのに気付いた夏月。昔のクラスメイトから「佐々木が帰ってきているからクラス会をやる。佐々木が夏月が来るなら出ると言っているので来て欲しい」と声を掛けられます。人付き合いの悪い夏月ですが、あの夏の日の校舎裏の共感を想起して出ることにします。

 佐々木は極度の水フェチで、その性癖が周囲に理解されず孤立しています。しかし、あの夏の日に共感を感じた夏月との再会を運命かと思い、「普通の人間であるかのように偽装するために結婚して欲しい」とプロポーズし、二人は唐突ですが結婚します。

 本作では数組の人物群が並行して動いていくのですが、ややこしくなるので佐々木と夏月に絞ります。

 佐々木はSNSで噴水で遊ぶ子供たちの動画を見つけてコメントし、発言者と交流するようになります。彼は水フェチで水にしか興味はないのですが、発言者は子供の方に興味がある幼児性愛者でした。彼は当該の動画を発言者から送ってもらいます。

 ある日、当該発言者は学校での児童ポルノ共有で逮捕され、そこから動画転送先として佐々木も重要参考人として出頭を求められます。

 彼は自分の水フェチのことを丁寧に説明しますが、検察官(稲垣吾郎)には理解されません。夏月は佐々木について証言を求められ聴取に応じます。彼女は夫の言っていることは真実であり、それが全てであると主張しますが、やはり検察官には伝わりません。

 と言うような、「伝わらない性癖を持った人の生きにくさ」に焦点を当てた二時間強です。

 すごく不愛想な新垣結衣と言うのは、ある意味で新鮮。そんな彼女と佐々木が二人だけの共感を大事にしていくのを周囲が破壊していくのは、見ていて辛いものがあります。

 ちなみに、本作は直木賞作家である朝井リョウのデビュー10周年記念作品なのだそうです。