陸戦戦術級ゲームに望むものを読んで

GJ13号のビッグ対談に越田さんが登場してその一部で陸戦戦術級について話しをしているので、その感想まで。
●旧スコードリーダー単体:これはジョン・ヒルの傑作だと思う。記事では越田さんの旧SL単体への言及はないが、この点については以前にお話したときには同意見だったかと思う。適度なところでディティールの追求をやめて、プレイのスピード感や、駆け引きの醍醐味が活きるところで切り出しているヒルのセンスは抜群だと思う。
●ASL:アンシェントウォーズに対して「木ではなく森を見たデザインで好き」と書いたが、その逆に「木ばかり見て森が見えなくなった」のがSLシリーズの進化の過程だと思う。越田さんの言う「恐竜的な末路」はシステム自体の巨大化に力点のある表現だが、この進化の過程に好感が持てないという意味では同意見かと思う。
●ファイアーティーム:FGAMEでファイアーティームを絶賛した張本人はわたしで、その意見に今も変わりはない。ただ、このゲームには問題もある。チット式で1ターンの間に戦闘行動が密なところでは多くのことが起こるシステムなのだが、その分だけプレイタイムに響いている。確かにヘリコプターまで合わせてもコンパクトなシステムに納まっているが、プレイアビリティという面では必ずしも良くはない。また、現代戦という比較的人気の薄いアイテムしか出なかったのも減点だと思う。サウザードはデザイナーとしては素晴らしいがマーケティングには失敗している気がする‥(^_^;
イースタンフロントタンクリーダー:これもジョン・ヒルの傑作、ゲームとしてプレイしたときの醍醐味を最適にするところでディティールとアブストラクトの境界を決められるヒルのセンスはやはり抜群。これが日本語ライセンスされなかったのは末代までの悔いとなろう。
●デザートスティール:越田さんはプレイしたことがないと語っているが、わたしは別の方とCADETでプレイしたことがあり、そのコメントはしたことがあるかも知れない。北アフリカでは地形的な妙味がなくポジショニングの醍醐味がないことから、このスケールなのにフェイシングによる有利不利がルール化されている。つまらなくはないが、イースタンフロントほどには面白くないし、なぜ同じ時代の同じスケールの同じシステムのゲームで、こちらでだけフェイシングが問題になるのかと言う疑問は拭えない。ちょっと取ってつけた感は否めないか?
●東部戦線:記事では言及されていないがエポックの装甲擲弾兵の東部版。個人的にはこれは是非とも議論の内側に入れて欲しい作品で、とても面白いと思う。このシリーズも西部より東部がずっと面白く、質対量と言う異質の対決がそれ自体興味深いということが認識できる。ところが再版でも西部戦線から先に出てくるのはどうしたことか‥(^_^;
●TCS:CADETでは多人数でのチーム戦でプレイされたことが幾度もあり、越田さんとも戦火を交えたことがあるかと思うが、確かに面白い。個人的には、自然語の命令書システムが機能するためには、もう少しプレイ展開が早くないとダメだと思うので、CWBの方が良いと思う。ただ、越田さんが言われる通り、戦闘システムにおける諸兵科の個性がそれぞれに反映され、それを的確に運用したものが戦況を優位に運べるという意味では命令システムがなくとも評価できる一作。戦術級の戦場を、個別兵器の能力と言う木ではなく戦場全体の展開と言う森として表現しているという意味では、やはり20世紀の戦術級ゲームの最後の大成果と呼んで良いと思う。