○すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えたを読む

bqsfgame2005-05-04

ティプトリーの1986年の世界幻想文学大賞受賞の連作短編集。
カタンキンタナ・ロー州を舞台にした幻想的な三篇からなる。
タッチとしては「ヴァーミリオンサンズ」やマイケル・コニイの連作短編集と近い。しかし、両者が架空世界であるのに対して、実在するキンタナ・ローが舞台というのが決定的な違い。これを読むと英米型の産業革命+資本主義が進んだ社会が現代のスタンダードだというのが幻想で、世界には違う体系の文化・文明の空間が実在するのだということをひしひしと感じる。そういう意味では京都に行って古寺に身を置くのと似たような読書体験という気もする。個人的なお気に入りは最後の「デッドリーフの彼方」