☆タフの方舟1禍つ星を読む

bqsfgame2005-10-17

GRRマーティンの本で文庫出版となると、取り合えず買っておくのが常なのだが、今回はあとがきを立ち読みしたら、そのC調ぶりがいただけなかったのと、「ハイペリオンをお好きなら是非」という惹き句がハイペリオンを好きではないので抵抗を感じて買うのをやめてしまった。
行きつけの図書館に入ってきたので借りて読んで見たのだが、これは失敗、内容は素晴らしく面白い。
生物探査戦BSMパンドラ号の航海と遭難の二部作を思わせる環境エンジニアリング兵団の胚種船を手に入れた宇宙商人タフの連作短編集。
B兵器戦争の専門兵器でありとあらゆる病原体や危険生物を満載してクローニング技術と時間加速技術を備えているという。この技術を利用して様々な惑星の危機を生態系改変で助けていくというビジネス物語。
「禍つ星」は、タフがどうやって方舟号を手に入れたかを描く後年の作品。まさにパンドラ号の遭難状態で、船内にばらまかれた病原菌、襟巻きドラキュラ、地獄の仔猫、歩く蜘蛛の巣、土ころび、ティラノサウルスレックスなども交えて乗り込んだ冒険家たちがそれぞれの思惑で戦う。
「パンと魚」は、人口爆発に悩むが人口制限をする気がないス・ウスラムの三部作の第一部。この回はオーソドックスな生態系改変で問題を解決するが、その成果を見て方舟号を奪取しようとする政府決定からほうほうの体で脱出することになる。
「守護者」は、ウィンダムの「海龍目覚める」を思わせる海底からの侵略者に悩む植民星の物語。しかし、「モウドウ」という軍艦型の生物の次は、空を飛ぶ飛行船を襲う「風船爆弾」、さらに地を這う「多脚戦車」。これに対して急かされたタフが捕食動物を投入すると、これらの動物は次々に進化して見せる。
これは‥と思うと、案の定、正に相手も生物兵器戦争に長けた知的生命体というカラクリなのだが、その相手とは‥。
3編とも面白く、打率100%。7編の中にムラがある「ハイペリオン」より素晴らしい‥というのが個人的な感想。中でも「守護者」は抜群の面白さだった。こういう生物兵器の進化戦争みたいなゲームがあると面白いと思うのだが。「クァークス」や「ウルズッペ」、「エヴォ」などがその系列に位置すると思う。ただ、「クァークス」並の奇想天外な生物が、「ウルズッペ」のようにアグレッシブに戦うゲームがあっても良い気がする。