○『「柊の僧兵」記』を読む

bqsfgame2006-03-16

菅浩江の第一長編だそうな。1990年の作品と言うから、個人的にはSFをあまり読まなくなってから後の最近の作品。
いわゆるジュブナイルの成長物語なのだが、設定に随分と本格的な取り組みがあちこちに見えて、往年の(それこそ眉村卓の)ジュブナイルを少年時代に読みつけた者にとっては、なんとなくタッチと設定が噛合わない印象を受けて意外にしっくりこなかった。
良く書けているとは客観的に思うのだが、かつての「謎の転校生」や「狙われた学園」のように思い入れることはありえない。それは、やはり多感な時期に読んでこそ感じられるタイプの作品というのがあって、これはその種の作品だと思うから。いま多感な時期にこの本を手にとって読んでいる人がどう思うのか聞いてみたい気がするが、聞いても意味がないという気もする。
ちなみに徳間デュアル採録時に加筆されているということだが、どのくらい変っているのか分からないが、変えなくても良かったのではないかという気がする。この種の作品にとって重要なのは完成度ではなく、瑞々しいタッチの方だと思うから。