ショートゲームレビュー:アンティータム

bqsfgame2006-09-22

英語版コマンド22号の付録ゲーム。
「ファイアーティーム」、「トーキョーエクスプレス」などのサウザードのデザイン。ただし彼のデザイナーズノートはなく、デベロップをしたボンバとペレロがD−ELIMを書いている。このためサウザードの意図は直接知ることはできない。
アンティータム戦の史実をどう見るかだが、個人的には凡戦という気がする。両軍共に悪手、緩手の応酬を繰り返し最後には物量に勝る北軍が一応は土地を取ったが損害は甚大で威張れない戦いだったと思う。それでも連敗続きだった北軍にとっては意義ある戦いだったわけでリンカーンはこれを政治的に利用するために宣伝した。
北軍の司令官は個人的にはご贔屓のマクレランである。思えばワシントンはこの時にはマクレランを持ち上げた訳で、後に解任、さらに大統領選挙で争うことになるとは思っていなかったのだろう。
マクレランは、南北戦争におけるウォーゲームのデザインの重要課題の凝縮のような人物かも知れない。南北戦争の戦略級での悩みに、政治的な要素も絡んだ将軍人事問題と言うのがある。VGの「ザシヴィルウォー」でもAH/GMTの「フォーザピープル」でもこれは大きな焦点の一つ。その中でも重要なのがマクレランをどう使い、どうやって適切なタイミングで優秀な後任と置き換えるのかというのがある。これには政治的な要素が絡み、マクレランが政治的に大きな位置を占めていたため排除しにくかったということが絡んでいる。
作戦級から戦術級になってくると、マクレランは物量に勝る戦場で指揮しながらフォッグオブウォーの中に過大な敵の脅威を見て勝機を逸し続けたということが焦点になる。南北戦争では指揮官の果断さがしばしば勝敗を分けたが、慎重に過ぎて勝利を逃し続けたマクレランは象徴的な存在だと言える。
このゲームでも北軍の指揮には制限があり、軍団単位で任務状態、臨戦状態、待機状態のいずれかに置き、任務状態のときだけフルに能力を発揮するようになっている。6個軍団の内、任務状態におけるのは2個軍団に制限されており、物量の優位を生かして全線攻撃に出れば南軍が困っていたはずなのに戦力の逐次投入で南軍の獅子奮迅の機動戦闘による戦局支持をさせてしまったマクレランの実戦が再現されるようになっている。
また、このゲームでは北軍が上記の陰謀で鈍いので北軍をゲームシステムに任せて、ボビーの立場で獅子奮迅の活躍を楽しむソリテアプレイができるようになっているのがミソである。サウザードは「トーキョーエクスプレス」や「キャリアー」など、重量感のあるソリテアゲームをいくつかデザインしているが、この時期のウォーゲーム界の衰退による対戦相手確保難を睨んで、意識して手応えが十分にあるソリテアをデザインすることを命題としていた気がする。
これも日本語版コマンドになっていて、日本語版編集部が結構、南北戦争を扱ってくれていることを嬉しく思う。残念ながら未プレイ。ただ、ソロができることもあり、いずれはやってみたいと思っている。