「ゲインズミルの戦い」は、七日間の戦いの二番目の大戦闘になる。
6月26日のメカニクスビルは北軍の戦術的勝利だった。しかし、南軍の積極的な行動は数的優位を背景とするに違いないと邪推したマクレランは弱腰になり、戦略的後退を開始した。ポーターの第5軍団はゲインズミル付近まで後退して27日を迎えることとなった。
これに対してボビー・リーは、再び第5軍団を標的に、南北戦争中でも南軍で最大規模の攻勢を直ちに実施することとした。これがゲインズミルの戦いである。南軍が動員したのは、なんと合計6個師団。これは南軍の動員力を考えると、主戦線であった東部戦線での勢力充実期とは言え限界に近い規模である。
ちなみに南軍の6個師団は、前日に引き続いて参加のAPヒル、ロングストリート、DHヒルに加え、ヴァレー・アーミーのジャクソン、ユーエル、ホワイティングの各師団である。ジャクソン師団は、実際にはジャクソンが軍団指揮官格の仕事をしていたため実務的にはワインダーが指揮していた。
メカニクスビルもそうだったが、南軍の諸師団の連携は上手くは機能しなかったとされる。
この日もAPヒルが第一撃を担うことになった。これをロングストリートが応援したのだが、ロングストリートは慎重派であり沼沢地を通過しての攻撃は好ましくないと判断。ジャクソン軍団の側面からの攻撃が開始されるのを待って本格的な攻撃に移ることとして、自重気味の動きを取った。
ところが、此処で天下のストーンウォール・ジャクソンは、七日間の戦いで二度目の遅刻をするのである。
ジャクソンはジャクソンで、既にロングストリート師団が北軍を押しているものと勝手に判断し、同士討ちを避けるために自重気味の動きを取ったのである。
この事例を見て判る通り、現場レベルの指揮官はウォーゲームのプレイヤーと異なり戦場の状況に関して限定された情報しか持っておらず、しかもしばしば不正確な情報を持っていたりするのであった。
プレイヤーが全情報をタイムリーに把握し、それに基づいた的確な指令を全部隊に命令し、それが遅滞なく実行されるなど、実際の戦場ではまったく在り得ないということを痛感させられる展開である。