○ソングマスターを読む

bqsfgame2007-03-08

オースン・スコット・カードのハヤカワ文庫での最初の紹介作品だったのではないかと思う。
発売当時に買って読むのは今になって初めて‥(^_^; 奥付を見ると昭和59年、1984年の出版であり、23年前のことになる。
カードの筆力はSF界の中でもトップクラスで、ウィリスあたりと比べてもそれほど遜色ないと思う。ただ、その割に食指が伸びないのは、なんとなく若い頃の遺産をテクニックで書き伸ばして食いつないでいるような印象がネガティブなのだと思う。典型的なのは短編「エンダーのゲーム」が、どんどん巨大なシリーズになっていった事例だろう。
本作も短編「ミカルのソングバード」と「ソングハウス」からの長編ということもあって、なんとなく本棚で燻ぶってしまい、とうとう23年が経ってしまった。
読んだ印象として、若い頃のカードの良くも悪くもピュアな書きぶりが印象的だと思った。これより最近の「消えた少年たち」などと比較すると、ずっと透き通っていて、ある意味で冷徹で厳しい部分を持っていると思う。どちらも列記としたカードの作品なのだが、やはり作者の年代の違いのようなものが感じられる気がする。もし23年前に買ってすぐ読んでいたなら、この作品をとても好きになっていたかも知れない。しかし、今となっては「消えた少年たち」の方に心を強く動かされた。
また、音楽に対する透明感のある長編という意味でトマス・ディッシュの「歌の翼に」をもう一度読みたいと思わされたりもした。