×マッカンドルー航宙記を読む

bqsfgame2007-04-25

迷ったが「×」にしてしまった。
ハードSFの見落とされた佳作という評価で読んでみたのだが、率直に言って科学的なアイデア自体は面白い。ブラックホールサイエンスについて勉強させてもらった。また、そこから派生するSF的なアイデアも面白い。
ただ、この本の問題は、結局のところそうしたサイエンスを解説し、どこからがSFであるかを明確にした付録が一番おもしろいのであって、本体の小説部分が面白い訳ではないというところにあると思う。
小説としてはキャラは類型的でストーリーは平板であり、付録で要領よく面白く説明されているアイデアを、冗長に勿体を付けて書いているだけという気もする。
文系の人は「理工系の人はハードSFが好き」と思っているようだが、少なくとも自分は工学部だがハードSFは全般としては好きではない。理由は、ハードSF小説よりも、科学そのものの方がセンスオブワンダーが凝縮されていると思うから。わかりやすく書けていて、最先端の科学トピックのセンスオブワンダーを伝えてくれる科学解説書の面白さは、大抵の場合はそれを題材に書かれたハードSFを上回ると思う。敢えて冗長度を増して小説の体裁を取ることを正当化するには、それなりの小説としての魅力が追加されていなくてはならないと思う。残念ながら、それができていないものがハードSFには多いと思う。