☆星を継ぐものを読む

bqsfgame2012-05-12

1980年に訳出され、当時、大変話題になったサイエンスミステリー。
月面で発見された宇宙服を着た死体は、なんと5万年前のものだった。これは一体、どういう説明が付けられるのか?
と言う出発点で、後は延々と科学プロジェクトの進捗が語られていく。科学的な作業仮説の立案と討議が主軸となっており、およそ小説らしくない側面もある。しかし、SF的なセンスオブワンダーの原点に還った面白さがあり、必ずしも成功したとは言えないニューウェーブ運動の後の一つのエポックメイキングな作品だった。
本作品はホーガンのデビュー長編だが、後に続編が書かれて三部作になった。しかし、2作目の評判は1作目よりだいぶん落ちると言われ、買ったまま読まずに置いてあった。今回、三部作まとめて読んでみようかと、まず第一部から読み直してみた。
30年余りを経てもなお新鮮な面白さがあるのには驚いた。
最終章では、主人公により天体物理学的な矛盾が解き明かされ、これで物語りは終わったかに思えた。ところが、その後に主人公のライヴァルが立ち上がって、進化論的な矛盾に対してまったく新しい斬新な仮説を切り出してみせる。
このラストの迫力は圧倒的だ。
巨大な宇宙船も、最新兵器も登場しないが、このパンチ力は驚嘆に値する。センスオブワンダーとは何かを改めて考えさせ、当然のように星雲賞を受賞したのが懐かしく思い出される。
さて、今回は続編へと進むわけだが、どうだろうか?