ドイツ装甲軍団シリーズの新作が出たことでもあり、原点のドイツ戦車軍団からプレイし直してみることにした。
ドイツ戦車軍団の「エルアラメイン」は、非常にプレイ時間が短いこともあって、往年のエポック作品時代に良く遊んだものだ。今回は、一応、その三部作の中で一番難易度の高かった「ハリコフ」からプレイしてみることにした。
「ハリコフ」は、当時も遊んだが、正直に言ってどうプレイしていいのか良く判らなかったという印象だけが残っている。盤上にはドイツ軍のユニットが6ユニットしかいない状態でプレイが始まり、ソビエト軍が続々と増援として登場してマップ上を前進してくる。ドイツ軍にも増援が登場してくるが、十分な数はなかなか揃わない。
今回改めてプレイしてみて、このゲームの難しさは、「アウトプットの遅さ」にあるのではないかと感じた。
ソビエト軍は、どこに攻勢主力を持ってきて、何処までドイツ側の都市を奪うのかと言う長期的な展望を持ってプレイする必要がある。しかし、そのプランニングは初期の内に計画して投入するユニットの進入位置や進撃方向を決定しなければならない割に、その計画で正しかったのかどうかというアウトプットが得られるのはゲームが終盤に差し掛かってからになるように思う。終盤になって、ソビエトが攻勢限界に達してドイツの反撃を受けるようになり、ゲームの最終ターンが見えてくる頃になって、ようやく「このままだと合計何点になるので、ソビエトに残りそう」とか「ドイツの反撃により逆転されてしまいそう」とかいう結論が得られてくるのだ。
ゲームの作戦の良し悪しを計る時に、作戦の結果がすぐに得られればPDCAを回して作戦を改善していくことができる。ところが、アウトプットが遅いゲームには二つの点で難しさがある。
第一にアウトプットが遅いので、PDCAのサイクルそのものを一回転させるのに時間と労力が掛かる。
第二にアウトプットまでの足が長いために、最初の決断とアウトプットとの間に、様々な他の決断やランダムさの揺らぎの入る余地があり、ノイズがひどい。このため、最初の決断の可否をアウトプットに結びつけること自体が難しい場合が出てくる。
結果として、ハリコフをプレイすると、取り合えず「その回の勝敗」と言うのは出るのだが、それを踏まえて次のプレイに反映して作戦が練りこまれていく‥というサイクルがプレイ時間が短い「エルアラメイン」のようには出にくいのだと思う。
また、「ハリコフ」自体の寸が長いので、プレイの途中で最初の方針を貫徹しきれずに修整してプレイしてしまいやすいということもあると思う。
今回のプレイでは、ソビエト軍は単純な西進プランを徹底することにしてみた。このことはプレイ開始直後からのソビエト軍のムーブで比較的容易に類推されようから、ドイツ軍側はこれに呼応して増援をできるだけ西へシフトして対応するようなプレイをしてみた。
結果から言うと、第7ターンの時点でソビエト軍は22点対8点で14点差でリードしているという状況になった。最終的に得られる都市についての得点は盤上の都市が合計で19ヘクスあるので、ドイツが13対6まで取り返さなければ14点差を挽回することはできない。言い替えればソビエトは7つ以上の都市を最後まで保有できれば勝利できることがわかった。この時点でソビエトが7つ以上の都市を守り切れる見通しが既に得られていたので、ソビエト軍の勝利と言うことでソロプレイを終了した。
単純な西進プランは以下の点で有力なのではないかという印象を持った。
1:大きな得点源であるハリコフの4ヘクスを確保でき、さらに主力を全面的に西進させていれば最終的にハリコフをソビエトが守り切れる可能性も高まる
2:ポルタワ陥落によるサドンデスという可能性も存在してくる
3:ドイツ軍の南方増援を、盤上を東から西へと大きく救援機動させることになり、結果としてドイツ軍の増援が反撃攻撃で実際に戦果を挙げる機会を減らせているように思う
と言ったところだろうか。
今回の反省として、ドイツ軍側は全面的な西進対応をしてしまうのは過剰で、反撃した時に上述のように相当数の都市を奪回し直さなければならないことを目算して、そのために必要な位置に必要な兵力を配備しながら戦力の西方シフトをしなければならないようだ。
こうなると、ゲームの最終的な目算、具体的には何都市を奪回しなければならないかをイメージし、そのための都市としてどれを想定するかまで決めてドイツはプレイしなければならないということになる。結構、敷居が高く、なかなか初見で実施できることではないように思う。ここらへんが「ハリコフ」がルールが簡単でありながら、およそ初心者向けとは言い難い部分ではないかと思う。
この辺りの見通しまで持った状態で、全体の構想を睨んで、各所の戦況を計りながらプレイできるレベルまで達すると俄然おもしろくなるのかも知れない。
機会があったら、「ハリコフ」のプレイ経験者同士での対戦プレイを実現してみたいものだと思った。