×エンジンサマーを読む

bqsfgame2009-03-30

1979年のクロウリーの長編。
ジョン・クロウリーは、非常に世評の高い作家だ。彼の代表作である世界幻想文学大賞受賞作「リトル・ビッグ」は、ファンタジーの定義を書き改めさせる現代ファンタジーの金字塔と言われる。本書も訳者の大森望氏によれば、「永遠の名作」だという。
そんなこともあって非常に大きな期待を持って読み始めたのだが、さっぱり肩透かしだった。
率直な感想を言えば、平板で退屈な物語だった。読みにくさは特にないのだが、淡々と進み、最後までそのまま終ってしまった。
文明が崩壊した未来世界の少年の一人称の物語。夏が終って永遠に続く冬へと季節が移り変わり、ツンデレな美少女への憧れが永久に失われるストーリーの作品だ。確かに「ハローサマーグッドバイ」を思わせるような部分があり、好きな人がいるのもわからなくはない‥という程度だろうか。だが、個人的には作品世界の魅力は薄く、さらにヒロインは全く好きになれないタイプとしか言いようがなかった。
本書が面白かったら、「リトル・ビッグ」も読まなくてはならないだろうかなどと懸念していたが、これできっぱりと読まずに済ますことができるようになり、少しばかりホッとしたというところだろうか。
「80年代のブラッドベリ」という評価もあるそうだが、そう言われてみると筆者はブラッドベリも苦手なので、ああなるほどと思わなくもない。リリカルなイメージを文章で作り出せるだけでは、個人的には感心できないという点で共通するものがあるのかも知れない。