新規軸は?

本作品の特徴は3つくらいあるだろう。
1:二日間の戦いで、初日は運河に掛かる7つの橋の奪取でドイツがサドンデスできるようにしてあり、運河の防衛線への肉薄戦をやらせる。二日目はその防衛線の後ろの都市の支配や、イギリス軍の盤外への離脱、イギリス軍の総合的な損害を議論させる‥という時限式の勝利条件により全体の展開を誘導しつつ、短期目標と長期目標のバランスを考えた作戦立案を要求している。
2:攻勢側の砲撃、防御側の防御射撃、攻勢側の白兵戦というシークエンスのため、砲撃の効果が大きく、白兵戦まで展開すると防御射撃と白兵戦損害の双方が相俟って攻撃側に多大な出血がある戦闘システムになっている。
3:イギリス軍側のシークエンスが、2フェイズ選択式で、移動と攻撃から2つを選ぶようになっており、戦線補整が不要なら2回砲撃を選択することもでき、逆に緊急機動が必要なら2回移動を選択したりもできるようになっている。
というところだろうか。
そのいずれもプレイしたときにちゃんと機能している。その意味では、クレバーなゲームデザインと言えるし、デザイナーのベルを評価する声にも一理あるかなという気がする。
ただし、個人的な好みとしては、
1については、以前にも書いたが初見ではゲームの全体期間を見通した戦略プランを要求するのは無理があり、最低でも2回3回とプレイするプレイヤーでないと醍醐味を満喫することは難しいだろう。
2については、これはもう好みとしか言いようがないのだが、こんなに損害が出るのなら攻撃などしたくないと思わせるくらい強烈だ。
今回、7ターン目までプレイしたが、ドイツの三個軍団の歩兵は32ステップ×3=96ステップで開始するのだが、ゲーム半ばの7ターン目開始時で30ステップしか盤上に残っていなかった。つまり、2/3以上がゲーム前半で既に消失してしまっていた。特に中央の第3軍団は酷く、32ステップ中、1ステップしかなくなってしまった。
南北戦争後半から進んだ防御施設を利用した防御戦術+銃砲の進化の成果も、此処に極まれりという印象だ。だからこそ、正面攻勢をできるだけ避けて、いかに機動戦の展開に持ち込むかという戦略眼を問うゲームなのだと思う。しかし、そこから先は1の問題に帰結していて、ゲームを2回、3回とやりこんでいく人にしか、ゲームの醍醐味に到達できない作りなのだという気がする。