☆まだ人間じゃないを読む

bqsfgame2010-07-11

その昔にサンリオから出版されていた「ザ・ベスト・オブ・PKディック」という4分冊の最終巻に当る。
サンリオ崩壊後、比較的はやくに早川から再版されたものだ。
本巻は、ディックらしい現実崩壊感覚が明確でSFらしい作品が多い。その一方で、シチュエーションや結末は、シニカルを通り越して非常に意地が悪いものが多い。その意味では読んでいて後味の悪い物が多いと言えるだろうか。
干渉する者は、典型的なタイムマシンものと言えるが、未来を救おうとするものこそが未来を破壊してしまうと言う皮肉な結末だ。
かけがえのない人造物は、まさしくディックらしい「貴方の見ている世界は、見ている通りのものではない」ことが暴露されていくストーリー。これも結末は非常に救いのない方向へと進んでいく。
表題作は多くの人の怒りを買ったと言うが、無理もないことだろう。人間と認められる年齢を胎児から大幅に引き上げたという作品。非常に恐ろしい話しだ。