○MM9を読む

bqsfgame2013-05-28

実は山本弘の本を読むのは初めて。
怪獣ものと言うこともあって以前から読みたい本のリストに入ってはいたが、なにせ長大なリストなので一向に実現しなかった。
MMは、モンスター強度の略称。対策部隊は気象庁管轄下の気特隊。ただし、気特隊は、怪獣の分析までで攻撃任務は自衛隊と言う業務分担になっているそうだ。
怪獣の設定にそれなりの屁理屈を付けてはいるが、ハードSFと言うには程遠い。なんとなく設定的にスペクトルマンの公害Gメンに近いなと思っていたら、キメラ怪獣の前例としてネズミと鳩、モグラナマズと言う事例が出てきて、そうかスペクトルマンが原点かと納得させられた。
怪獣のタイプは色々だが、普通の地底怪獣とか古代怪獣は出てこなくて、群体生物であるシークラウドから始まって捻りのあるものが多い。書下ろしの新作に登場するグロウバットは、どことなく「ペルディードストリートステーション」を思わせる。最後の怪獣は、八岐大蛇>九頭竜>クトゥルフと言うお馴染みの手筋を使っているが、単なる怪獣に非ず前世界の邪神と言うところが正にクトゥルフ。これにクシナダヒメ伝説を絡ませて、前の伏線を合流させている。なかなか手の込んだ連作集だが、肩の凝らない読み物に仕上がっている。