○七つの会議を読む

bqsfgame2013-10-23

半沢直樹」の大ヒットで、一気に時の人になった印象の池井戸作品。昨日も書いた通り、個人的には、ドラマは半沢より七つの会議の方が面白いと思いました。
ただ、原作を読んでみてびっくり。群像劇なのはそのままですが、ドラマで視点人物である原島は、原作では一度として視点人物にはなりません。むしろ居眠り八角とか、経理の新田とかが視点人物として扱われていて、ちょっとびっくりします。
逆に、この状態の原作から、原島視点で全編を通して描く脚本を良くぞ組み上げたものです。
結果として、ドラマと原作は全然雰囲気が違います。
ドラマでは、一課長の突然のパワハラ更迭で栄転したはずが偽装隠蔽の重責を負わされる原島の懊悩が軸になります。
原作では、逆に隠蔽を知らない人物側からの謎解きに近い作りになっていて、隠蔽する側の懊悩と言うのは表に出てきません。
また、池井戸作品はしばしばサラリーマン痛快時代劇と言われますが、本作品はそうした印象が薄いのが特徴です。誰もが少しだけ自分が大事などこにでもいるサラリーマン。それが組織全体として巨悪と化してしまう、その「止められそうでどうして止められなかったのかと言う組織の暴走」が主人公です。ですから、此処には半沢のような気風の良い勧善懲悪の長広舌はどこにもありません。多くの人物は半沢に斬られた側の人物のように、なんでこんなことになってしまったのだろうと言う後悔を抱く立場になります。その意味では半沢に出てくる人物でいうと、岸川取締役がたくさん出てくる群像劇と言う印象でしょうか。あまり適切な表現でないかも知れませんが、端的に言えばそういうことです。逆に言うと、そこに本当にこんな会社がありそうな気がして恐ろしくもあるのです。