○ソマリアの海で日本は沈没するを読む

bqsfgame2013-12-19

モダーンウォーの「ソマリアの海賊」を対戦する企画が通りました。
で、俄か勉強です。仮想戦ゲームだから関係ない気もしますが。
で、アマゾンで評判が良かったので読んでみました。2009年4月の本ですから、丁度、ソマリアへの自衛隊派遣が決まるタイミングでのタイムリーな出版だった物です。実を言うと、こういう時事ネタの本はホットイシューな時期にしか売れないので、その後は良い本は出ていないようです。幸いにして海賊問題自体も、この時期を境に被害減少に転じたようで、事態に大きな進展はありません。
ソマリアの海賊問題は、あまりに新しい問題なので真実が確定していません。基本的には無政府状態ソマリアの漁民が武装化したもので、国際テロ組織との関係は薄いことになっています。しかし、そうと決めつけるのは早計ではないかとの意見が本書にもあります。
本書は危機管理コンサルタントなる職業の人が書いている点が大きな特徴です。こうした最新の時事ネタの場合は、基本的にはジャーナリストが書くことが多く、後は情報へのアクセスが難しいので外交問題の専門家、軍事問題の専門家くらいでしょうか。危機管理コンサルタントなる職業があることすら知りませんでした。
で、危機管理コンサルタントの立場から論じているので、日本の危機管理能力の甘さに関する切込みが鋭いのが特徴です。本書を読むと、先の大戦の反省に立ってアジア諸国への配慮から自衛隊の海外派遣に過敏になっている日本の、世界の危機管理意識からの乖離について考えさせられます。
筆者も政治的には護憲派なので、耳の痛い所がありました。是非とも「自衛隊の海外派遣は全てノー」の立場の人は一読してみて欲しいです。
あと現代の海賊の実態、それに伴う法的権利関係などは勉強になりました。そうか、そういうことが起こってくるのかと感心させられます。日本では海賊と言うと近年はディズニー映画とマンガのワンピースのイメージが強くて、なんか浪漫チックな印象を受けますが、本来、海賊は万国共通の敵として全ての国から極刑で処される極悪稼業。近代までは普通の死刑では物足りないかのような処刑法で罰せられた存在です。AHの「ブラックベアード」と言うヒストリカル海賊ゲームがありましたが、あれをやると畳の上では死ねない稼業なのだと痛感させられました。それだけに今を謳歌し無法を尽くすのが海賊の生き様なのでしょう。
脱線しましたが、現代の海賊はそんな近代海賊とは全然様相が違います。しかし、様相は違えども万国の敵として位置づけられているのは同様、それに対処するために自衛隊を派遣するのに日本の警察の基準を持ち出して先制攻撃をしてはいけないとか、撃って良いのは撃たなければ自分が危険な時だけとか言う基準を大真面目に国会で議論する国の天然ぶりはなるほど国際的な基準で照らして目に余る物があるのかなと納得させられます。
多少、問題提起のために語調が強すぎるかなと思うところもあります。確かに平和憲法はファンタジーかも知れませんが、自民党の首相の一人が言ったように「我々は壮大な実験に取り組んでいるのだから何ら恥じることはない」憲法であると思います。
また、「罪を憎んで人を憎まず」は美談であり本質解決に繋がる思想ですが、「海賊が悪いのではない」「彼らを海賊にしてしまった社会が悪いのだ」と言うのは一理あっても、現場での対応には役に立ちそうにありません。
そんなことを色々と考えさせられる一冊です。
ソマリアとは関係なく、会社で危機管理を担当する人は読んで参考になる部分があると思います。
で、勉強になったのですが、ゲームプレイには別に役に立ちませんね‥(^_^;