刑事コロンボを見る(16、17、18)

通番16話目は、断たれた音です。この訳題は、あまり好きになれません。ネタバレしてますし‥。原題は、「もっとも危険な対局」です。このエピソードはチェスの対局が重要なので、こちらで良かったのではないかと思います。
犯人は、現在のチェスのワールドマスターであるクレイトン。神経質で天才肌のチェスプレイヤーですが、「前ワールドマスターであるデューデックが引退してくれたお陰で王座に就くことができた」と揶揄されています。
その彼の前に復帰してきたのが、東欧圏の不世出の名人デューデックです。復帰した彼とクレイトンの対決がプロデュースされ、両者は同じホテルに宿泊します。
対局前日、美食家のデューデックは、大好物のエスカルゴを食べにお目付け役の目を盗んで外出。クレイトンはそれを尾行して同じレストランへ。そして、デューデックはクレイトンをテーブルに招きます。会話がそれなりに弾む中、デューデックは白い塩の小瓶を取って前に進めます。クイーンのポーンを進めるオープニングです。これをクレイトンが黒コショウの小瓶を進めて受けます。両者の対局は閉店時間まで続いて打ち掛けになります。
ホテルに戻ってデューデックの部屋で続きをと言うことになりますが、既に終局まで読み切っていたデューデックは初心者に解説するかのように一手一手を説明して自分のチェックメイト勝ちを示します。
この結果に危機感を覚えたクレイトンは、デューデックをホテルの廃棄物処理システムに突き落とし、それをレストランの対局でデューデックが負けて失望して自殺したかに見せかけようとします。
このエピソードのチェスシーンは、かなり力が入っていて見応えがあります。ただし、それなりに知っていると突っ込み所があるのは止むを得ません。
コロンボがチェスプレイヤーの棋譜記憶力に驚くシーンがありますが、実はそれほど驚くことではありません。筆者もペーパー有段者(囲碁)ですが、自分の打った棋譜を当日中に思い出して記録するのはそんなに大変なことではありません。これをやると家内も驚くのですが、ランダムに置いた石を順番に覚えろと言われれば、200手の手順は暗記能力を越えます。しかし、自分が読みながら打って、それぞれの手の意図や物語があるものであれば200手の手順は、実はそんなに大変なものではありません。
閑話休題
筆者がこのエピソードを好きなのは、ボードゲームの一つであるチェスの世界的な価値を正しく紹介していること。それから被害者のデューデックの人間的魅力にあります。デューデックを見ていると、亡くなられた越田一郎さんを思い出します。恰幅が良くて、医者に節制を言われているけれども美食を止められなくて、ゲームが強くて、人柄が優しい所は良く似ていると思います。越田さんが亡くなられて今年で9年になりますので、人物を知らないウォーゲーマーも増えてきているかも知れません。そういう方には、「コロンボに出てくる前世界名人のデューデック氏のような人でしたよ」と説明することにしましょう。判らない物を別の判らないもので置換しているだけかも知れませんが‥(^_^;
ちなみに演じているのはローレンス・ハーヴェイで、「アパートのカギ貸します」の隣のお医者さんなのだそうだが、見たはずですが記憶にありません。
あと試合のプロモーターであり、クレイトンの元婚約者であるリンダを演じるハイディ・ブリュールって、ちょっと綺麗ですね。
通番17話は「2つの顔」です。このエピソードはシーズン2の最終話になります。ただ、「パイルD3」のように時間延長、大掛かりなトリックと言うことにはなっていません。
代わりにシリーズの異色作と言う脚本の工夫があります。コロンボでは倒叙物の常として犯人が最初に明示されます。そして、犯人のトリックも序盤で明示されます。ところが、今回は犯人が明確になりません。
犯人と見られるデクスターが屋敷から退出し、お手伝いさんが警報装置を入れます。そして、デクスターが戻ってくる直前に誰かが警報装置を切るのですが、この時に手袋をはめた手しか映りません。で、戻ってきたデクスターが浴室で叔父さんを感電死させます。
と改めて書いてみると、この段階で犯人が二人であることが示されていたのですが、謎解きまでそういう風には思っていませんでした。
理由は一卵性双生児であるデクスターとノーランが、互いに相手の方が疑わしいとコロンボにアピールし、それを見ていてなんとなく思考回路が「どっちが犯人なのだろう?」と言う路線に入ってしまったのですね。
結論は、二人が共謀して殺したのであり、警報装置の問題も、重い死体をどうやって浴室から移動したかも、そう考えるとすっきりと解けるのでした。
ちょっと捻った脚本ですね。
ただ、その見せ方が上手く行っているかと言うとそうでもありません。実は筆者は、二度も途中で寝てしまい、起きたら終わっていたので巻き戻しました。寝てしまうと言うことは、退屈だと言うことなのですね‥(^_^;
通番18話は、毒のある花です。化粧品会社のアンチエイジング化粧品の新発明を巡って、女社長が発明を持ち逃げしようとする元愛人の若手研究者を殺害する事件です。
個人的な好みの問題ですが、愛憎ものって好きではありません。また、犯人の緻密な計画殺人をコロンボが崩していくのが定番の本シリーズには、あまり向かない題材かなと思っています。
また、自分勝手な話しとしては、世界史をソロプレイしながら見たので、細部を把握しきれず、そんなこともあって何となく終わってしまいました‥(^_^; こういう勿体ないことをしてはいけないのですが、家庭内のチャンネル権の事情もあって僅かしかない自分の時間に一緒に処理せざるを得ないのが実状です‥(;;)シクシク