○コロロギ岳から木星トロヤへを読む

bqsfgame2014-11-01

本年度星雲賞長編部門受賞作品。
図書館に入ったので予約待ちして読んだ。実は小川一水の長編を読むのは初めて‥(^_^;
奇妙なタイトルだが、実は内容そのまま。
そもそもは、空間次元の一つを拘束され、時間と他の空間次元二つを移動可能な生物が、物語の発端。この生物はビッグバンと言う時間起点を最上流として流れる池を泳ぐ深海魚みたいなもので、そこから見るとある惑星の蓋然性の連なりは池に立ち並ぶ楔みたいに見えるらしい。
で、泳いでいた生物が分裂のため遡上しようとしていて尻尾が23世紀のトロヤ小惑星群の蓋然性に引っ掛かってしまい、慌てて頭を振ったら2014年の地球に引っ掛かってしまい身動き取れなくなったそうな‥。と言う、ベイリーか、ワトソンかと思うような奇抜な設定。
で、23世紀のトロヤ側では、尻尾のせいで敗残戦艦内部に閉じ込められた少年二人。2014年では、北アルプスのコロロギ岳の観測所の主人公、百葉が、それぞれ生物と遭遇。結果として、23世紀の少年二人は、時間生物経由で21世紀に助けを求め、21世紀側からは200年越しの伝承や物資承継によって救援を送ると言う凄いことになる。
なかなか凄いのだが、あまりにも凄すぎて作者も物語の細部をコントロールしきれていないかも‥と言う不安は感じる。時間テーマの常だが、真面目に考えると因果のコンシステンシーが崩れているような気も。
とは言え、近年、日本SF作家の書くSFらしいSFは貴重なので楽しく読めた。一点だけ難点を上げれば、23世紀の少年二人に萌えて共感する主人公と、盟友のキャラクター造形はどうしても好きになれなかった。
次の機会には「第6大陸」を読んでみましょうかね‥(^o^)
あれ、地元図書館の蔵書検索で出てこない?