「不安定な時間」と並ぶ、サンリオのフランスSFの成果です。
☆は少し甘いかも知れませんが、その希少な成果としての価値を足しています。
本作は、ヨーロッパの雪深い国境を一人用反重力ホバーを背負って突破するシーンから始まります。近未来を舞台にしたスパイ小説の作りです。
しかし、この潜入する対象の鎖国しているマルコム連合は、時間伸縮装置を国民に普及させており、結果として時空の歪みを発生しています。この装置の普及状況を調べ、必要なら対策を打つのが主人公の任務です。本作は多視点になっていて、時間伸縮装置の製造会社重役、その息子、マルコム連合政府要人などが登場します。それぞれの立場からくる思惑で事態に関与しており、錯綜した展開となります。
エンディングは、エヴァンゲリオンの人類補完計画みたいになっちゃって、少々、発散しています。その意味で完成度では、「不安定な時間」に見劣りするのですが、それでもかなり面白く読めます。
キュルヴァル作品は、他に「さかしまの男」が翻訳予定に挙がっていましたが、実現することはなく残念に思っています。