クレタ1941をソロプレイする

ソロプレイですが、もともとソロプレイゲームなので、此処が終着点です。
うん、これは割と良いのではないでしょうか。
全島に広く、かつ拠点である空港には厚く展開している連合軍。
それを空挺降下、強襲上陸、対地爆撃して撃破、最終的に全軍撤退に追い込むと言うソリテアです。
その目的を達した上で、VP判定するのですが、引き分けの範囲が広めに設定されているので、完全勝利するのはそれなりに大変な感じ。とは言え、多くの古典的なソロプレイゲームが相当に運に恵まれないと勝てないのに比べれば、到達可能な所に設定されている第一印象です。
第一の美点は、攻撃の選択肢が広く用意されていることです。最初は島に拠点がないので、リスクを取って空挺降下するよりありません。強襲上陸は、損害を受けにくいという点では良いのですが、海上迎撃されると中止になってしまいます。それを防ぐには、イギリス海軍戦略爆撃してやれば良いのですが、それをやると空挺降下部隊の近接支援が薄くなります。一旦、拠点が確保できればリスクの低い空輸も利用できるようになります。なので、空挺部隊で確実に拠点確保して空輸する路線を取るか、空挺部隊には少しリスクを背負わせても強襲上陸を併用するかが、戦略の分かれる所か。
第二の美点は、自軍の損害ペナルティが大きいことです。ソリテアゲームでは目的さえ達成すれば自軍部隊は使い捨てみたいになるものがあるのですが、本作は特に空挺部隊の損害ペナルティが大きい。史実でもヒトラーは本作戦の空挺損害を重大視して以後、空挺作戦に消極的になりました。ですので、妥当な設定。しかし、その結果前述した戦略選択では空挺部隊支援を優先したくなるようになっています。でも、それをすると損害ペナルティの低いイタリア軍や、攻撃力の高い装甲部隊の上陸が遅れます。長い目で見て、なにが最善かが悩ましくできています。
第三の美点は、連合軍が適度にいやらしい動きをすることです。連合軍側は、イベント結果でしか動いてきません。しかし、増援の投入と、反撃のイベントは、ゲーム上重要な空港と港湾に対して仕掛けて来るようになっているので、なかなか小賢しい。特に一度制圧した港湾に連合軍の増援とか発生すると、「この野郎!」と思います。これも、連合軍のモラルが低下してくると発生しにくくなるようになっていて、敵がモラルダウンすることの意味が良くできています。
第四の美点は、連合軍コマンドレベル(モラル)というエンジンが上手く機能していることです。コマンドレベルが高い内は、個別戦闘のイニシアチブに修整が付いて先制射撃しやすい、イベントを振る回数が多いので前述の反撃が起きやすい、そしてそもそも高い間は撤退しないという形になっています。ですので、コマンドレベルを下げる戦略爆撃もできます。しかし、毎ターン、保有している拠点数分だけ回復するので、飛行場や港湾を一定数確保してしまわないと、爆撃してもどんどん回復されてしまいます。ですので、まず戦術的成功を積み重ね、そこから最終的に戦略的なダメージを与えて撤退に追い込むと言う段取りが要ります。この辺り、短時間でプレイできるソロプレイゲームなのに、ストーリーテリングな作りになっていて、さすがはミランダ先生と思います。こういう政治インデックスみたいなものを組み入れることで、相手の行動のパターンを段階的に変化させるメカニズムは、ブライアンの「シャイニングパス」や、古くはミランダ自身の「アフガニスタン聖戦」から来ているものでしょう。此処では非常に上手く機能しています。