○太陽からの風を読む

ACクラークの短編集を順に読んできましたが、とうとう5冊目、最後になりました。

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最後とは言っても、自分史的には最初に読んだ短編集なので印象深いです。

今回読んでみて、多分に記憶の美化作用を受けていた気がしました。改めて読んでみると、それほど珠玉の短編集でもありませんでした。

とは言え、表題作は、さすがの出来栄えです。もちろんヨットレースをモチーフに取っているのですが、宇宙空間ならではの太陽風ヨットが航行していく姿はロマンに満ちています。

巻末の中編「メデューサとの出会い」は、木星でのファーストコンタクトものですが、飛行船とのアナロジー、人間のサイボーグ化の問題も含んでいて、もっと長く書いてくれれば良かったのにと思いました。

冷戦が核戦争に発展してしまった後を描くショートショート「最終指令」は、皮肉な落ちですが、ある意味で人間信頼の物語とも取れるでしょうか。

もっと読み応えのある中編が多かった記憶がありましたが、意外にアイデアストーリーのショートショートも多くて、そこは意外でした。クラークは、結構なショートショート作家だったのですね。