〇ふしぎの国の犯罪者たちを読む

山田正紀のクライムノヴェルと思って読みましたが、確かにそうではあるのですが、ちょっと雰囲気が違いました。

六本木にあるバー「チェシャーキャット」では、お客たちは本名や職業を明かしてはいけないというルールをママが厳格に適用しています。

そこの常連の冴えない中年の兎さん、ちょっと腕の立ちそうな帽子屋さん、学生と思われる眠り君の3人が、最近世間を賑わしている現金輸送車両警備の現金輸送車を襲撃する計画をゲームとして立案し実行するのが第一部です。

この計画はなんと無事に成功してしまいます。

ところが、それを知っているという荒事師の三人組に脅迫されて誘拐事件の現金受け取り部分を上手く仕上げて見せろと脅迫されて、どういう落ちを付けるかに腐心するのが第二部です。

メンバーの一人の帽子屋さんが古い友人に絶対に勝てる賭博があるから協力してくれと言われて苦悩するのが第三部。

そして、一連の事件の糸を引く黒幕が誰であるかの謎解きがされるのが第四部です。

終って見ると、非常に後味が悪く、ゲームだと思っていたのが、実は政治の手妻に利用されていて憩いの場であったチェシャーキャットも失われてしまいます。そういう意味では夕暮れ時に遊び疲れて家に帰るときの物悲しさが漂うエンディングです。