劉慈欣の短編集です。
久しぶりにリアル本屋に行って手に取ってジャケット買いしました。
三体三部作も凄かったですが、本書も凄く高密度で圧倒的でした。
郷村教師
死病に侵された田舎の教師が子供たちに授業を死ぬまで続けようとする話し。
それを宇宙戦争中の先進文明が見て、後天記憶を音声言語で授業をして伝達していく文明の非効率に驚きつつも、それによって核分裂技術までを紡ぎ出したことに驚嘆するという話し。
繊維
複雑に関連交錯する並行世界を繊維に見立てた小品。
詩雲
呑食世界というリングワールドを舞台に、圧倒的な先進文明との確執を描く「三体」の原型短編の一つ。
栄光と夢
戦争の代わりに代表選手による競技会で国家間の紛争を代理解決しようとする話し。圧倒的劣勢に立つシーア共和国の希望を担う射撃選手と女子マラソン選手のエピソードが素晴らしい。
円円のシャボン玉
SFマガジンの先行掲載で読んだシャボン玉を最先端技術として先鋭化させ環境改造に使おうという中編。その最後のヴィジョンの美しさには息をのむ。
2018年4月1日
十年後を描くという雑誌企画短編の一つ。改延という延命措置と冷凍冬眠によるカップルの断絶を描く。
月の光
未来の自分から電話がかかってくる三題噺。
最初は地球温暖化が決定的になるからソーラーセルを量産せよという指示。
それを実行すると危機は回避されたが、今度はシリコン畑が世界を食いつくしてしまったという電話が入る。ソーラーセル技術ではなく超深度掘削を推進せよという。
それを実行すると再び電話が。超深度磁場からエネルギーを吸い出した結果、地球磁場が弱まり紫外線直射が強まって地球は破綻しつつあると言うのだ。
円
表題作。秦代に完全人力コンピューターにより円周率を計算するという剛腕中編。「三体」の中にゲーム中のエピソードとしても登場する。