図書館です。
以前に読んだこちらが非常に良かったのでディレーニイの新作がないかと探しましたが不発。
なので、訳者の唐木田さんの最近の仕事を検索して、梗概を読んでこちらを借りてきました。
主人公は愛する妻が実の姉から暴力を受けてきたことを知り、さらに姉が家族の周辺に出没して危機を感じたことから殺してしまいます。夫婦で共謀して死体を隠して犯罪を隠蔽します。
次はその姉の知人がやってきて、お前たちが殺したのだろう公表するぞと恐喝してきます。なので、夫婦で共謀して殺害隠蔽します。
この夫婦での共同作業による一体感に酔ってしまった二人は、さらに新たなターゲットを探し始めます。住んでいる地域で18年前にあった連続殺人犯が帰ってきたと偽装して、彼が選びそうな女性で係累などがなく発覚が遅くなりそうな女性を選んで殺害し埋めてしまいます。
そのターゲット選びの過程で身辺調査のために主人公はターゲット女性をナンパし、一線を越えてしまいます。
そのことを察知した妻はどうするか‥というのが本作の中核部分です。
主人公が殺人のために夜中に出かけるのを見つけた息子は、浮気だと推定して主人公を恐喝します。この段階で、てっきり最後は恐喝してきた息子も殺してしまう話しになるのかと思いましたが、そうではありませんでした。むしろ息子は最後のクライマックスでは敢然と主人公を守るべく真犯人との間に立ちはだかってくれます。
さて、真犯人とは?
主人公は自分が真犯人のつもりでいたのですが、実は最初からそうではなかったという驚愕の真相がクライマックスで明らかになります。
そうか、そうだったのか! と絶句するアイデアです。
殺人犯側の家庭の心理劇なので、万人にお勧めとは言いにくいのですが、お代は見てのお帰りとは行きませんが一読する価値はあります。「冷たい家」より1ランク落ちますが、これもベストセラーになるだけのことはあります。
以下、ネタバレ注意です。
9
8
7
6
5
4
3
2
1
p242
ローリーがわたしを恐喝してのけたことに、はじめは感心したものだ。それは認めよう。証拠を押さえた息子より、押さえられた自分に腹が立った。
p401
わたしはできるかぎり声を大にして言います。最近ふたりの若い女性が殺害されたのは、痛ましく、たいへんつらいことです。ですが、これだけははっきり申し上げます。兄は今回の事件とはなんの関係もありません」
p479
ナオミの血でそのメッセージを書くことができた人間はひとりしかいない。話を聞いたときからわかっていた-別の説明を探し求めていただけだ。
「夫をはめたのか」わたしは言う。
p483
「どれぐらい前から計画してたんだ」
「それって大事?」
いや、もうどうでもいい。
「説明させてくれないか?」
「だめ」
「ミリセント」
「なあに、謝るつもりなの。たまたまこうなっただけで、悪気はなかったって?」
ぐうの音もでない。
「それで、どうするの? 逃げて隠れるか、それともとどまって戦うか
ほらまた、だからあなたはダメなのよ」
p502
アンディが一瞬ためらってから、首を横に振る。「そこまで、めちゃくちゃになったんなら真実を告げよう
おれはミリセントを全然好きじゃなかった。いつも少し冷たい感じがした」
「きみは正しかったよ」
p535
夫が連続殺人鬼だと知った妻ならそうするのが当然だろう。夫をはめた連続殺人鬼ならそうするのが当然だろう。
p560
わたしはその顔を凝視しながら、ホリーについてミリセントから聞いた話を全部思い返す。怪我、事故、脅し。切り傷。まちがっていたパズルを直すように、頭のなかでピースが置き換えられる。
全部ミリセントが自分でしたことだった。