一之江ゲーム会:ブラスを対戦プレイ

bqsfgame2008-09-21

ワレスの最新の話題作。
かなり乗り遅れたが、ようやく初めてプレイすることができた。
率直な印象だが、なるほど本作は「複雑系」の面目躍如という気がした。インストを聞いた時点では、さっぱり全体像が見えず、序盤はどうしていいのか判らない内に前半戦が終わってしまった。キャッシュフロー重視を試してみて、一応、大台の三桁には乗せたものの、結果は最下位に終わった。
内容的には非常に面白い作品だと思うのだが、様々なサブメカニクスが詰め込んであって複雑になっている。しかも、その多くが勝敗を競う上で重要性があり無視できないので大変さが募っている。
大きく言えば、
工業を設置し、水路や鉄路で接続して勝利得点を稼ぐゲーム。
‥なのだが、話しがいろいろと複雑になっている。
まず工業には種類がいくつもあり、メインは綿紡績をして、それを港湾から輸出するという路線になっている。それ以外に石炭鉱業と製鉄業があり、これらから得られる石炭と鉄が工業や鉄路の建設に必要になってくるということがある。これに国際貿易の時代を睨んで、もっとも大きな勝利得点を計上する造船業が存在している。
また、ゲームは2フェイズに分かれていて前半は水路、後半は鉄路の時代となっている。
実際のプレイはカードドリブンになっていて、手札を1枚使用して1アクションを行うという方式だ。このカードに地名カードと工業カードがあり、それによる制限がある。
これに加えて極めてゲーム的(実際の工業発展での何を表現しているのか不明)なアクションとして、自分の建設工業タイルをスポイルすることができるようになっている。工業タイルは建てやすくて価値の低いものから順に立てるのだが、価値の高いものをいきなり立てるために順番が先のタイルをアクションを消費してスポイルできるという訳だ。アクションを消費して、直接は何も生産しないので、このプレイの価値が非常に見極めにくい。しかし、ゲームが終盤になってきて建設されている建物の価値を計算していくと、このアクションの重要性が判ってくるようになっている。しかし、判った時には時すでに遅い訳で、この部分が非常に本作を初見者に不利なゲームにしているように思った。
ゲームのテイストとしては、やりたいことがたくさんあるけれどもアクション数の制限、カードによる制約、資源による都合、水路や鉄路による制約などでできることは限られているというオーバーロード型(やりたいことがやれることに比べて多過ぎて悩ましい)の構造になっている。
このときに上述した様々な制限や制約のいろいろがどれも重要で全部がきちんと見えた上でベストの選択をしていかないといけないのだが、初見ではそれが難しい。
あと他プレイヤーとのフリクションが、マネージメント系としては大きい気がした。工業の建設地は限られており、その争奪戦はカードの制約も含めて深刻だ。また、資源供給産業は、需給バランスがタイトな場合にはオーバーテイクが可能だというルールがあり、これにより直接、他人の工業の得点を奪ってしまうことができるので、攻撃的な印象を受けた。
この辺りのシビアさも含めて、ルールでできることとできないことの判断がしっかりした上にプレイを立脚させなければならず、初見では非常に厳しい印象を受けた。
この辺りの深刻さを考慮すると、本当に勝敗を競ってプレイが成立するには、全員が一定以上の理解をしている必要があるのかなという気がした。その意味では全員経験者という状況でプレイしてみないと真価は見えないのかも知れない。
その一方でプレイ時間は4時間近く掛かり、プレイ感も非常に重いので、これを複数回プレイすることを前提に取り組むとなると、かなりディープゲーマー向けの作品だと感じた。
繰り返しになるが、ディープゲーマーには堪らない要素が満載の佳作であることに同意するに吝かではない。しかし、敷居は非常に高く、ディープでない人には近寄りがたかろうか。個人的な意見であるが、18xxのプレイアブルな作品(18FL、18scan、1889)あたりより敷居が高い気がした。