☆エロスを読む

bqsfgame2012-11-20

マイナスゼロに続いて亡き広瀬正長編です。
他の方の感想にもありましたが、本書はタイトル以外は完璧と言って良い珠玉のオルタネートワールドSFです。でも、タイトルの悪さで大幅に損をしていると思います。
昭和SFのファンの一人として、日本にも本書のような素晴らしい時間SFがあったと言うことは後世に語り継がなければならないと思います。
マイナスゼロと同じように、昔の東京の街並みが魅力的に描き出されています。そしてそこに雑誌の企画で「もしもあの時」とインタビューされた国民的女性歌手。彼女の歴史の分岐点を基点に、現在ある過去ともう一つの過去を現在から振り返っていきます。
そして、エンディングで広瀬さんはとても上品にカラクリを明かしてくれます。けれども、それは本当に上品で奥ゆかしいほどです。SFらしいアイデアを盛り込んでおきながら、本当にそれはさりげなく提示されています。そして、読者はじっくりと余韻に浸ることができます。
解説の小松先生が書いている通り、広瀬正と言う人は本当にハイカラな紳士だったのだなと思わせる珠玉の名編です。