ノルウェー1940をソロプレイする

気付いていなかったのだが、実は「ノルウェー1940」と言うゲームは昔も存在していた。ジャック・グリーンがデザインし、HJがライセンスしたダブルブラインド式の作戦級ゲームである。グリーンの作品は、アイアンボトムサウンドを筆頭に、割と日本でライセンスされることが多く、その一つである。
で、念のためだが、此処で書くのは最近のWaW誌のミランダの「ノルウェー1940」の方である。
ゲームシステムは、最近すっかりメジャーになったレッドドラゴンシステム。各ターンに、各プレイヤーは数多くのアクションから1つを選んで実施する。また、豊富で強力なランダムイベントによりゲーム展開が大きく左右されるのも特徴の一つである。このシステムは、レッドドラゴンライジングに始まり、台湾海峡1950、サウスシーキャンペーン、グリーンクレセント、フォークランドショウダウン、そして本作と続いている。採用頻度から見て近年の大ヒットシステムの一つと言っても過言ではないだろう。題材を見て共通しているのは、WW2以降で、海戦中心だが陸戦要素も含んでいるものが多いことである。所謂、陸海空の立体作戦を比較的プレイアブルに再現することのできるシステムとして、主としてデザインサイドから好まれているように思う。
ヴェーゼル演習作戦は、ドイツ軍のノルウェー侵攻と言う上陸作戦を主体にしているが、英国を中心とした強力な敵対海軍との海戦も再現できなければならない。また、中黒ノルウェー!でもそうだったが、ドイツ本土から近く、さらにドイツが先にノルウェーの飛行場を制圧する展開もあって、ドイツ空軍が華々しく活躍する。このため、空軍作戦も焦点になる。陸海空の全てを含んでおり、これを再現するのに新時代の花形であるレッドラシステムが選ばれたのだろう。
ソロプレイした感想だが、さすがに百戦錬磨のミランダのデザインは良くまとまっていると感じた。このゲームの大きな特徴に、ドイツ軍の初期作戦の特別ルールがある。レッドラでは、1ターンに両者が1アクションずつを実施するのが大原則である。ところが、此処ではドイツの奇襲によりドイツは第1ターン8アクション、第2ターン4アクション、第3ターン2アクションを実施できる。この初期アクションを利用して、ノルウェーにどのように地歩を築くかを作戦的に設計するのがドイツプレイヤーの最大の課題である。
この課題を考える上で考慮すべき点は多いが、初回で強く感じた点を挙げる。
1:イギリス艦隊はドイツ艦隊よりも強力なので、イギリス艦隊が活動し始めるとドイツ艦隊は能動的な作戦展開は難しくなる
2:ノルウェーは長い海岸線を持つ国で、そこに展開するノルウェー守備隊は分散しており、個々には脆弱である
3:2はドイツがノルウェーに侵攻する上ではドイツに都合が良いが、実はドイツがノルウェーを制圧した後は立場は逆になる。つまり、ドイツは長い国境線を有するノルウェーを保持するために陸軍兵力を分散せざるを得ない。他方、イギリスは陸軍兵力の規模は小さいものの、制海権を持っており好きな場所に集中して上陸可能である。これをドイツが海上や水際で阻止することは難しい。

結果として、ゲームはドイツ軍の強力な侵攻作戦で幕を開ける。北部の重要な港湾ナルヴィクを、長躯艦隊を差し向けて直接上陸侵攻するのか、それとも南部に上陸した後、抵抗の弱い陸路を北上するのかはドイツ軍プレイヤーの作戦設計に委ねられている。
また、珍しくも強力な空軍を持っているドイツ軍は、その空軍戦力を運用するために、どのようにノルウェーの空港を制圧し、空軍兵力を移転していくのかも考える必要がある。これと併せてドイツ軍が実効性のある空挺作戦能力を保有しているのもポイントである。
序盤では圧倒的なアクション数優位を持っているので、どう攻めても成果は上がりそうだが、制圧した時点での海軍、陸軍、空軍の兵力配置によって、次の段階のイギリス軍の逆上陸に対してどう戦うが変わってくる。これは、実際にイギリス軍の反攻が始まってから考え直すことができない。理由は制海権を奪われてしまい、陸軍兵力は1ターンに1エリアずつしか移動できないからである。
フォークランド・ショウダウン」で問題になった勝利条件については、特に大きな変更はされていないが、今回は問題は感じなかった。もっとも大きな得点はノルウェーの港湾エリアの支配によって与えられる。しかし、多くの港湾エリアが長い海岸線に分布しており、ゲームの展開上、この得点は両者の間で分割されることになる。結果としてゲームは僅差になってくるが、そうすると細かい勝利得点である敵ユニットの撃破の点も問題になってくる。
ゲームは、ドイツ軍の侵攻、イギリス軍の逆上陸と続き、終盤は得点となる港湾エリアを巡って海岸線の各所で争うことになる。接戦となれば、損害の最小化、敵への打撃も細かい所まで神経を使う必要が出てきそうである。
先にプレイした中黒ノルウェー!と比較すると、かなり違っている。中黒ノルウェー!は、本ゲームの前半のドイツ軍の侵攻に焦点を当てており、さらにノルウェー制圧ではなく通商破壊戦と言う戦略的選択肢を用意して作戦的な醍醐味を与えている。
対して本作は、イギリス軍の逆上陸までカバーし、両者に攻撃機会を与えると共に、最後までノルウェー国土で作戦を競う作りになっている。
このため、規模の違いだけでなく、そもそも扱っている題材が同じとは言いにくいほどにテイストの違いがある。
どちらを選ぶかは好みだと思うが、規模が違うと言っても本作もプレイ時間4時間くらいで終わる半日規模のプレイアブルな作戦級ゲームであり、ダブルブラインドのグリーン作品やオイロパのナルヴィク強襲と比べればグッとプレイアブルだ。なかなか悪くない陸海空三軍一帯の作戦級ゲームだと思う。特に、なかなか活躍する機会を見つけにくいドイツ空軍、ドイツ海軍ファンにはお薦めの戦場だと思う。