コンポーネントの愚痴はさて置くとしてゲーム内容の話しをしましょう。
実は不勉強でスペイン内戦の意義とか実態とか良く知りません。そういう意味では折角のブライアンの特集記事を読まねばと思うのですが、次の新幹線出張の時まで実現しそうにありません。なので、ゲームから逆方向に類推しています。予めご承知おきください。
スペイン内戦と言うくらいですから、戦うのはスペイン政府軍とスペイン反乱軍です。
理解していなかったのは、当時のスペイン政府軍と言うのは左派主導で、これをソビエト連邦が支援していたと言うことです。反乱軍はご存知フランコ率いるファシスト派でドイツ、イタリアが支援していました。コミュニスト対ファシストと言う構図なので、英仏は中立模様。隣国のポルトガルは反乱軍支持でした。
ゲームは1ターンが2~3ヶ月と長くなっており、マップは細かめのエリア方式です。同一エリア戦闘で、敵と同一エリアに入ると進入停止です。ヘクスゲームとエリアゲームの中間的なゲームシステムになっています。ブライアン曰く、ユニット捌きの作戦級ゲームではなく、政治的な戦略視点を大事にしたかったための選択だそうです。
もう一つデザイナーズノートでブライアンが強調しているのが勝利条件です。勝利条件は純粋に政治ポイントだけで争われます。相手の政治ポイントをゼロにする以外に勝つ手段はありません。極論すれば敵の全軍事ユニットを除去しても政治ポイントが残っていれば敵は降伏しません。うーん、軍事組織的な抵抗を鎮圧しても戦争に勝利したことにはならないとは、近年のアメリカの対イラク戦争へのアンチテーゼを見るかのようです。
そうすると政治ポイントに注目してプレイ指針を立てることになります。
政治ポイントを得る最大の方法は、外国の支援/介入を受けることです。逆に失う最大の要因は外国の支援を一切失ってしまうことです。
つまるところ、スペイン内戦とは名ばかりで、スペインを戦場としたコミュニストとファシストの代理戦争に他ならないと言うのがデザイナーの分析であり、ゲーム表現であると言うことのようです。
ゲーム開始時から政府軍はソビエトの、反乱軍はドイツ、イタリア、ポルトガルの支援を受けています。これを政治ポイントの収入源として、さらなる支援や、支援の延長線にある介入を交渉することがゲームの主要な活動になります。
これだけだと政治活動と政治トラックだけのゲームになってしまうのですが、外国の支援によって得られた資源ポイントで軍備を実施できます。その軍備を使ってスペイン国内で戦うことができ、州の支配権を得ることで政治ポイントを得られます。逆に支配権を失うと政治ポイントを失います。これによって補助的に政治ポイントは変化します。
外国の支援は反乱軍の方が手厚いのですが、政府軍はさすがに政府なのでスペイン各地の州支配では優位を持っており、こちらからの政治ポイントで状況を維持する構図になっています。
しかし、外国支援の厚い反乱軍は軍備を推進して各地の支配を覆していきます。これによってゲーム終了までに反乱軍が政府の政治ポイント源を奪ってゼロに追い込めるかどうかが課題になります。
政府軍側には、もう一つ問題があります。左派主導とは言いながら寄せ集め政府なので、諸派グループが5つも政府内にあります。で、毎ターンの予算を全派閥に配布しないと、政治ポイントを失うようになっています。これは頭が痛い制限で、もともとが少ない予算を5つの派閥に広く薄く配布すると、強力な師団ユニットの編成ができなくなってしまいます。それでは、軍事的に攻勢に出るのが難しくなります。
これに対して、特定の派閥を政府から排除するパージを実施できます。パージしてしまうと、以後はその派閥に予算を配布する必要が無くなります。しかし、パージの実施に対して一過性の大きな政治ポイント減少が発生します。それでも延々と予算配布の制限を受けながら暮らすよりは長期的にはマシかも‥と言うのが判断の難しい所です。
軍事的なルールは、前述したエリア方式の特徴を除けば、意外に普通です。普通に戦闘比を計算してCRTで判定します。ただし、CRTの結果は除去する戦力値で書かれています。この時に、ゲームの序盤はほとんどのユニットが1戦力の旅団です。師団を編成するには外国の支援や介入が必要です。正規の2ステップの師団を編成するには、支援では駄目で介入が必要なので、まず介入まで外交することが序盤の大きな課題になります。
そのためには、広く多くの国と外交するより、シンパの特定の国に集中的に外交することが有力です。かくて、政府はソビエトと、反乱軍はイタリアと強く結託するようになります。特に国境を接するイタリアは、介入に至ると直接軍事部隊を派遣してくるのでイタリアの動向はゲームの流れを変えそうです。
システム紹介になってしまいましたが、普通のへクスウォーゲームではないWW2の作戦級ゲームとして興味深い作品だと思います。初回ソロプレイとしては、ゲームの仕組みを理解する所までだったので、またやりたいと思っています。でも、最低でも混乱マーカーとプレイエイドは作らないといかんですね。