×隠生代を読む

bqsfgame2014-06-18

1967年のオールディス長編。
ハヤカワ銀背で訳されたが、ハヤカワ文庫には再録されなかった。
読んでみると、なるほどこれは文庫化されなくても無理ないかなと言う出来栄え。
設定としては、近未来に意識だけを大過去へタイムトラベルさせるCSDなる麻薬ができている。未来社会では独裁政権が発足し、それに絡んで反政権活動家がタイムトラベルで脱出したりしている。
さらに、謎の未来社会からの大過去へのタイムトラベラーが登場して来たり、どうも誰がどういう利害関係で動いているのか良く判らない。
結局、反政権活動家の一人が射殺されると、未来からのトラベラーがコンタクトしてきて、実は我々の認識とは異なって、時間は未来から過去へ逆流しているのだと言いだす。
しかし、終章では、実は主人公は妄想狂として収監されており、今まで述べてきたことの全てが妄想であると言う、恐ろしくガッカリするオチになっている。
なんじゃ、こりゃあ?‥と言う感じである。
オールディスは、割と打率の低い作家で、暗い光年、世界Aの報告書、解放されたフランケンシュタイン、ブラザーズオブザヘッド、本書あたりが「×」だと思う。改めて考えてみると、名作「地球の長い午後」と「子供の消えた惑星」、「マラキアタペストリ」を除いたら、短編作家と言った方が良いのかも知れない。