図書館です。
「折りたたみ北京」に続く現代中国SFアンソロジー第2弾。
全16編ですので、快心作もあればピンと来ないものもあります。
「金色昔日」
現代中国史を天安門から日中戦争へと逆方向に遡っていく一種のオルタネート歴史もの。天安門に関する描写がある作品が発表できる、それも英語でいきなりアメリカで発表されるというのに驚いてしまいました。
鄧小平時代、文革時代、毛沢東時代など、どういう風な景色として中国では見られているのか、非常に興味深く読めました。SFとして快心作かと言われると少し物足りない感じもありますが。
「月の光」
劉慈欣です。日本語版の表題作として選ばれました。
未来の自分から現在の自分に、今すぐ環境対策のために行動せよという電話がかかってくるお話しです。化学燃料の使用を直ちに止めよという最初の電話に従って行動すると、少し経って別の自分から太陽光発電の拡大でたいへんなことになっているという電話が。そこで太陽光発電拡大を止めると、また別の自分から電話が‥。アラビアンナイトの著名な3つの願いの変形みたいな話しなのですが、非常に科学的にもっともらしい考察がされている所がミソです。これは快心作。
「晋陽の雪」
宋軍に包囲された晋陽。最近現れた鬼才の新戦術のお陰で長い包囲戦を粘り続けている。しかし、敗北後の処遇を考えれば早く降伏する方が良いかもしれない。そのためには、この謎の鬼才を暗殺してしまった方が‥。と言うことで暗殺しに行くのですが、実はこの男は未来からのタイムトラベラーだという‥。
歴史小説の見せ掛けで始まり、しっかりSFとして落としています。
「始皇帝の休日」
征服を終えた始皇帝がゲーム三昧の暮らしに入ると宣言。
そこでゲームクリエイター各社が自信作を始皇帝にプレゼンするという内容です。実在のゲームを元ネタにしたものが並んでおり、それが次々と始皇帝を怒らせてしまう様が滑稽です。
我々は時間線の過去方向の記憶を蓄積して暮らしていますが、未来方向の記憶を持っており時間と共に記憶を失っていく女性を描いています。
未来方向の記憶を持つのは進化上有利とは言えないというのは、昔の堀晃の短編にあったかと思うのですが、此処では不利を通りこして悲劇であることが語られます。