千葉会:ナポレオン帝国の崩壊を対戦プレイする

アドテクノスのナポレオン帝国の崩壊です。
森野デザインということもあり、「アウステルリッツの太陽」が再版された時には、遠からず本作も再版されるものと期待されました。しかし、国内戦役二百周年で実現せず、ワーテルロー二百周年の今年もスケジュールに挙がっていないようです。
そんなこともあり、アドテクノス版を引っ張り出して来ての20年以上ぶりの再プレイです。
シナリオは1814年キャンペーンを選びました。
陣営は当方が連合軍、DRAGOONさんがフランス軍
正味6時間くらいプレイして4ターン終了までプレイしました。全21ターンですから、このペースが続くなら30時間コースということになります‥(^o^; 時間が掛かるというのは昔のプレイでもそうだったので、想定内といえば想定内です。
プレイ展開の方は、ナポレオンの活躍に強く依存しているフランス軍ブリュッヒャーを先制攻撃。これをバルクライが支援して支えます。一方で、シュヴァルツェンベルグは右翼へ展開して、ナポレオンのいない所での前進を図りますが、シナリオ開始時から第6ターンまで延々と続く悪天候に阻まれて進捗は捗々しくありませんでした。
勝利条件的には、
連合軍は、フランス軍かパリのモラルを崩壊させると勝利です。フランス軍のモラルは、フランス軍リーダーの参加した会戦でフランスが勝利すると1上昇、敗北すると1減少です。万が一、ナポレオンが敗北すると一気に5減少します。しかし、ナポレオンが勝ち続けていれば、こちらの条件で敗北することはなさそうです。もう一つのパリのモラルは、国内防衛圏を形成する6都市の内の3都市を失うごとに1減少、パリから10ヘクス以内に迫られると1減少、隣接されると1減少で、減るだけで回復しません。で、上記4条件すべてが成立するとパリは降伏し、ナポレオン退位を勝手に決めてしまいます。
他方、フランス軍プロシア、ロシア、オーストリアの3国のモラルをすべて崩壊させると勝利です。
で、判らないのがリーダーが敗北すると各国のモラルは1ずつ減少するのですが、このリーダーというのが各会戦の総司令官だけなのか、それとも指揮下の下級指揮官も含むのかが明確に判断できない書き方になっています。常識的には前者のように思うのですが、それだとフランス軍が勝つことは不可能に近くなります。で、後者ではないかと言う議論にプレイ中に落ち着いたのですが、それだと連合軍は多国籍軍を編成するのは非常に不利なので、ロシア軍はロシア軍だけ、プロシア軍はプロシア軍だけに編成替えをしてからナポレオンと交戦することを選ぶでしょう。そうすると、初期配置の状態から編成替えをするのに序盤数ターンを使用することになります。また、それは1814年戦役の史実とは異なる展開を誘導します。
本当なら、1814年戦役では、シレジア方面軍とボヘミア方面軍という単位でモラル管理するべきという気がします。
国籍別管理する1815年戦役のスキームを1814年キャンペーンに適用すること自体が問題なのではないかという気がします。
そんな訳で、一番重要な勝利条件部分でのルールの明快さ不足は、ゲーム的には大きなフラストレーションだと思いました。
その一方で、ナポレオン戦争に対するデザイナーの理解の表現としては、見るべき部分が多いと思います。
特筆すべきは、戦闘システム関連です。
このゲームでは、セントラルフロントと同じく、移動中に移動力を使用して会戦を実施します。そのため、マルチスタックによる共同攻撃ができず、高戦闘比が立たないという難点があります。結果として、戦闘で優位を得るには戦闘比のコラムではなく、指揮官能力によるダイス修正に頼るしかありません。そして、指揮官能力という点では、ナポレオンは圧倒的なのです。
結果として、ナポレオンの強さは突出しています。もちろん、上述したようにナポレオンが敗北してしまうと、それだけでフランス軍は崩壊するほどの影響があるので負けられません。
また、戦闘システムでは会戦結果よりも、敵のモラルを崩壊させて敗走させ、それを追撃するダメージの方が遥かに大きくなっています。そして、追撃戦闘では騎兵が重要な役割を担っています。砲兵は会戦の各ラウンドで先制攻撃ができますが、量的に決定的なダメージを与えるには力不足です。こうしたシステムは、ナポレオン戦争の戦術をよく表現しているように思います。
そんな訳で、プレイ中に感じられるフレーバーとしては随所に時代の魅力があり、プレイそのものは面白くプレイできました。ただ、勝敗を決するという競技ゲームとしては大きな欠陥があるのです。
その意味で、過程を楽しむゲームとして遊ぶ意識のプレイヤーには強く推奨できる一方で、勝敗を競うゲーマーには全く薦められません。ある意味で、コマンドマガジンの「国内戦役1814」と対極にあるゲームとも言えます。どちらを取るかは好みでしょうが、筆者は本作を選択します。此処には、ナポレオン戦争の空気が満ちているからです。