○翼のジェニーを読む

bqsfgame2017-01-27

世の中、時として驚くことがある。
ケイト・ウィルヘルムの短編集が日本語で読めると言うのは、間違いなくその一つ。アトリエサードがSF/Fに参入すると言う話しに、編訳者の尾上氏が提案して実現したそうだ。
提案する勇気も、実現させた度量にも拍手。
改めて短編集としてまとめて読むと、ウィルヘルムの性格の悪さが目立つように感じられる。特に「灯りのない窓」。同じ感想をネットでも見掛けたので、少なからぬ人の共有する部分なのではないかと思う。
後は象徴的なモチーフが出てくるけれども、論理的にはどういうことか判らない話しがいくつもあった。原書ではタイトルストーリーになっている「1マイルもある宇宙船」がそう。
巻末の100ページ近くある「エイプリルフールよ永遠に」は、疫病で文明崩壊の危機に瀕している近未来。その中で科学者たちが選民思想的な生存策で暗躍している話し。いかにもウィルヘルムらしい話しで、「杜松の時」や「クルーイストン実験」などを連想させられる。ティプトリーの「ラセンウジバエ解決法」も少し思い出した。
ここらへん女性作家特有の視点と感じるのだが、どうだろうか?