WOWOWです。
折から「ファイアーブランド」を読んでいる最中だったので見ました。そうでなかったらスルーしていたと思います。
見た感想としては、批評家陣が言うように、豪華キャストに阿った歪んだ作りという印象を受けました。ブラッド・ピットがアキレスをやっていることの影響が悪い方に出ているように思います。
叙事詩「イーリアス」はアキレスが主役なので、この映画の着想自体が間違っているとは思いません。しかし、前半にトロイ側の描写を入れたことで、何を主張したいのか判らなくなっているように思います。前半のヒロインであるヘレンと、トロイのパリスの不倫関係は、なんで当事者は責任感覚が薄いのだろうと思ってしまいます。そして、ヘレンを連れて帰ることに同意してしまう兄、ヘクトールもどうかしています。さらに国に責任のあるプリアモスまで彼女を国に迎え入れてしまうのはどういうことなのか説得力がありません。
ともあれトロイ戦争は始まってしまいます。
で、理解しにくいのが後半のヒロインであるブリセイスの立ち位置です。パリスが従兄弟と呼んでいるのですが、これは本作の改編の一つ。で、クリューセーイス返還に伴って、ブリセイスを巡ってアガメムノンとアキレスが対立するのがオリジナルですが、神々の実在を否定する作りの本作ではアポロンの弓が出てこない(アカイア陣営での疫病は発生します)ので、二人の対立の経緯が弱いのです。
後半のヒロインであり、事実上全体のヒロインでもあるブリセイスを巡る経緯が弱いのは、本作の最大の問題点という気がします。
これだったら、思い切ってヘレンを中心にして王族の愚行により灰燼と帰すトロイの話しにした方が良かった気がします(それはそれで大ブーイングでしょうが‥)。
全体的に、製作側が迷走している印象を受ける映画でした。
ヘレン役のディアーネ・クルーガーは、さすがに綺麗でした。ブリセイス役のローズ・バーンが、ヘレンに見劣りするのも問題点の一つかも知れません。まぁ、「傾国の美女であるヘレンが一番キレイなのは適切」と言えば、そうなのですが。