で、面白いのか?

結論から言えば、個人的には非常に面白くプレイできました。
ただし、好みは分かれるでしょう。
最大の理由は、前述した通りドイツ装甲部隊が登場しないので、バルバロッサ作戦に付き物の電撃戦カタルシスがないことです。そういうものを求めるドイツ軍プレイヤーには、まったく受けないでしょう。
その一方で、昨年の「ファルブラウ」もそうなのですが、バルバロッサ作戦の限界点の苦悩をひしひしと感じます。
本作では、特に天候の影響が大きい。雨が降ると、ドイツ軍は三重苦に陥ります。
1:補給能力が低下する
2:機動能力が低下する
3:航空支援能力が低下する
いや、もう晴れと雨では、正に雲泥の差です。泥泥になるとどうにもなりません。
そういう意味では、勝敗は天候次第という気がしました。
そうしたVP上の白黒は別問題として、ドイツ軍をプレイしているとモーメンタムが失われていくメカニズムと過程が味わい深いです。
問題の1は、補給ルールです。マップの範囲が広いので、補給の中心は鉄道です。盤端補給源から鉄道によって距離無制限で供給できます。ところが、クリミア戦役では、シナリオ3開始時には鉄道が半島内に繋がっていません。しかも、鉄道工兵による転換作業は前線より大幅に遅れていて、開始後10ターン目にならないとマップ内の鉄道変換ができません。ですので、シリーズルールでは傍流であるはずの道路網補給が軸になります。
これが曲者で、規模の小さい作戦級ゲームなら1級道路は無制限とかですが、本作では好天時で21ヘクスしか運べません。雨になると15ヘクスに縮みます。そこから、最後は7ヘクスの連絡線が伸ばせます。ところが、これも雨になると5ヘクスに縮みます。
ですので、好天時には21+7ヘクスだったものが、雨になると15+5ヘクスに一気に8ヘクスも短くなります。なので、補給限界点まで前進していた部隊が一気に補給切れになります。
ただし、本作では補給線が切れても2つの方法があります。各ユニットは一定の備蓄を持っているので、1ターンだけなら備蓄で持ちこたえます。緊急補給です。
それとは別に、まるで北アフリカ戦ゲームなのですが、トラックで補給ポイントを輸送して、この補給ポイントを前線で消費すると5ヘクス以内にある5スタックに補給できます。ところが、このトラックの移動率も雨になると低下します。また、出てくるトラックの総数がデザインリミットなので、このマネージメントも大変。
これを辛い作業だとしか思えない人は、本作をプレイするべきでありません。
補給戦こそが戦争の本質だと思う人には、非常に知見に富んだプレイ体験となることでしょう。
個人的には、悪天候に苦しみつつも、補給マネージメントをして前線の部隊を支えて、石にしがみつくようにして前進するのは、非常にやりがいのある仕事と思いました。
「ファルブラウ」もそうでしたが、あと少し、あそこまではなんとかと思いながら進んでいくスポコンものアニメのようなプレイ感です。