臨時研究会:戦争と平和1813年を対戦プレイする

先般、ルールの大きな間違いでノーゲームとなった「戦争と平和新版」です。

今回は(多分)だいたい正しいルールで13年シナリオを対戦しました。

13年シナリオは、4月から12月までの9ターンですが、その内の6ターンのフランス軍ターン終了までプレイした所で、連合軍担当の小生が投了して終了しました。

要点を書きましょう。

ナポレオニックの戦略級ゲームとして煩瑣でなく、一年間戦役を一日で終われる貴重な作品

いわゆる「I go You go」系の単純システムだが、結局はこれで十分なのではないか?

しかし、新版と言いながらコンポーネントの機能性が低下しており、プレイしにくい

ルールは長年の経緯による多少の補足、明確化を除いて特に変わっていない

重要なことは新版がでてオークションの相場が下がったことだけでは?

 

マップ地形の識別性は非常に悪いです。また、旧版で言う地図版1(スペイン)と4(ロシア)だけで補給が厳しいことについて、新版ではフルマップになったためマップ上の黒実線で識別するようになったが非常に不親切。

これに加えて各国の国境、河川などいろいろなものがヘクスサイドを通っており、複数の境界線が通っているヘクスサイドでは極端に識別性が悪い。特にフランス国境を青にしたのは河川と判別が難しく最悪。

ユニットについては、サテライト小国ユニットが国別使い分けになっているためセットアップ時間を大幅に伸ばしている。また、戦闘時に重要なモラルの数値が非常に小さく印刷されていて極めて不親切。

プレイ中に戦力の減少によってユニットを両替するが、各国の歩兵、騎兵に複数の種類があるため、この作業時に種類を間違えやすい。一度、間違えてしまうと、中盤以降は是正することは非常に難しい。

30年ぶりにアップデートしたのなら、プレイヤーフレンドリーなコンポーネントにはして欲しかったが期待は大きく裏切られた。現状、新版登場で旧版のオークション相場は低下しているが、新版を実際にプレイした人の評判が伝わるにつれ、旧版の価格は再上昇するのではないか?

 

閑話休題

13年の諸国民戦争は、フランス軍プロイセン領に侵攻しゲーム終了時点でプロイセン領内に包囲されていない大都市を一個確保していれば勝利です。

ゲーム開始時点で、ハノーヴァー、マグデブルグを確保しており、カッセルも自軍勢力圏内。クラコフがオーストリア参戦と同時に入手できます(参戦するまでは都市内に侵入できない)。これに加えてハンブルグが両軍の境界にありますがフランスが先手なので手に入ります。

さらに、ナポレオン本体がドイツ中央部に進出することで、ライプチヒが手に入りました。結果として、フランスは合計6つの大都市をプロイセン盤(旧・地図盤3)に保有でき、ゲーム終了までに連合軍は全てを奪回しなければなりません。

諸国民戦争では連合軍の規模はフランスを明確に上回っています。しかし、将軍の能力や、部隊の士気と言った質の面ではフランスは依然として優位に立っており、焦点を絞った戦いであればフランスは決して劣勢とは言えません。その状況で9ターンで6個の都市を奪回するのは、ほとんど不可能ではないかという感想戦になりました。

前回の14年でも、パリに焦点が絞られてしまうと、ナポレオンをパリで撃破するのは至難と見られたので、13年でも14年でも連合軍は勝たせてもらえそうにありません。

しかし、「13年、14年で勝てないのなら、連合軍はいつ勝てばよいのだろう?」という話題になりました。

結論として、前述したコンポーネント問題とは別に、シナリオの勝利条件設定によるプレイ展開の誘導が非常に不味いという印象を強く持ちました。一度対戦すれば判るような話しなので、今回の新版作成に当って個々のシナリオのテストプレイは全くしなかったのだろうかと疑問を感じざるを得ません。

その一方で、冒頭に書いた通り、プレイアビリティと一定のプレイヴァリューを持つナポレオニック戦略級ゲームには、他に候補が見当たらないというのも事実です。

ナポレオニックは、少数派の熱心なファンが支えるサブジャンルになっており、その結果としてデザイン側も細かい史実まで再現するような精緻な(煩雑な)ゲームが増えてきており、結果としてプレイアビリティの低下が進行しているのかも知れません。SSシリーズの「皇帝ナポレオン」を別格として、今に至るも「戦争と平和」にとって代わるゲームが現れないことは、ナポレオニックゲームの現状の問題点を示していると言えましょう。

ところで、今回のプレイでは、連合軍はマグデブルグとクラコフを包囲戦で奪回しました。最後のターンにはカッセルに突入しましたが、ナポレオンによる反撃で再奪取されてしまいました。とは言え、6個の内の3個くらいはなんとかしたので、プレイ自体は一定の満足感はありました(負け惜しみ)。