大富豪同心も5冊目です。図書館。
今回は卯之吉のホームグラウンドとも言うべき吉原が舞台です。
吉原遊びをしていた同僚、沢田彦太郎が遊女殺しの下手人として嵌められた事件を解決すべく吉原同心を仰せつかります。
しかし、いつも遊びに来ている若旦那が同心とバレては遊びにくくなるので、由利丞を偽八巻として立てて置き、自分はいつもの若旦那として一緒に吉原へ。
押掛け女房の美鈴は旦那が吉原勤務とあって心配が尽きません。最後には自らも吉原へ乗り込み、今回もまた悪を倒して八巻の名を高まらせることに。
p265
「待てっ!」
美鈴は凛然と声を放った。禄太郎がギヨッとして振り向いた。
「なっ、なんでぇ手前は!」
美鈴はスッと腰を落とし、佩刀に手を掛けながら答えた。
「南町奉行所同心、八巻の手の者だ!」
(中略)禄太郎は少しばかり匕首の扱いになれている様子だったが、たかが悪党の喧嘩殺法だ。
「所詮、このわしの敵ではない」
美鈴は左手で刀の鞘を握って、二寸ばかり、鞘ごと前に抜き出した。
p279
「どうして、悪党どもの狙いが、付け火だとわかったのです?」
美鈴が訊ねると、卯之吉は振り返って、面はゆそうな顔をした。
「春駒さんが殺された日にねぇ、あの座敷には油の臭いがちょっと漂っていたんだよ。春駒さんや沢田様が油を扱っているわけがないんだから、その臭いは殺された安太郎さんの着物に染みついていたものだ、ってことさ」
(中略)
「なるほど」
(中略)
美鈴は賛嘆した。
(剣の腕はまったく立たないけれど‥。やっぱり旦那様は江戸一番の同心)
ますますもって熱烈に、惚れ直してしまったのだったのである。
と言うような訳でめでたしめでたし。
それにしても美鈴がカッコ良過ぎますね。
また、悪役側では、夜霧の治郎兵衛一味の残党、お峰が八巻の正体を見破ります。テレビ版では青山倫子が演じたそうで、これまたはまり役です。