×調停者の鉤爪を読む

bqsfgame2006-12-26

ジーン・ウルフの「新しい太陽の書」四部作、第二巻。
ネタバレになるが粗筋を。
ジョナスと共に旅をする主人公セヴェリアンは、サルトゥスの村で告発された女モーウェンナ、ヴォダルスの手先バルノックらを処刑する。見世物小屋で緑の肌の人間と出会うが、此処から物語りはサイエンスの要素を随所に散りばめるようになる。彼はどうやら未来からやってきた光合成能力を組み込んだ進化した人間らしいのだ。
宿に送られた花束に託されたセクラを名乗る手紙に導かれて地下行動へ潜ると、そこには夜光獣人たちが待ち受けており主人公は罠に嵌められたことを悟る。夜光獣人も恐れる巨大な怪物に襲われるが、秘宝・調停者の鉤爪の不可思議な光で窮地を乗り切る。罠を仕掛けたのはアギアであることを見出すが、敢えて彼女を殺さずに主人公は立ち去る。
一難去って宿に戻ったところ、今度は夜半にヴォダルスの手先たちに拉致されてしまう。しかし、ヴォダルスはセヴェリアンを見て命を助けてくれた若者と見て取り、主人公に頼みごとをする。劇団に合流して絶対の家に侵入し、そこにいる合言葉を知るヴァダルスの手先に渡し者をして、返しの伝言を受け取ってきて欲しいというのだ。
絶対の家に向うことにした二人は、背後からノトゥールという黒い分裂吸血生物を仕掛けられて九死に一生を得る。しかし、それも束の間、今度は絶対の家の兵士たちに捕まってしまう。絶対の家の牢獄は牢獄と言うよりは世代を越えて軟禁され、それ自体が生活になってしまった人たちのコミュニティーだった。ここで調子が悪くなったジョナスのためにセヴェリアンはできることをしようとするが、実はジョナスは機械であり墜落してから補修部品を探して旅しているものだと言うことがわかった。ジョナスは自らの旅に別れていくことになった。
セヴェリアンは家にある秘密の通路を使って牢獄を抜け出し、かつて訪れた絶対の家の一画へと入る。そこから奇妙な仕掛け扉を抜けて黄色の服を着た両性具有人と出会う。彼はヴォダルスの合言葉を知っており渡し物を受け取る。だが、どう考えても奇妙なことに、仕掛け扉の奥に隠れているこの人物は独裁者その人だと思われるのだ。順序は入れ替わったがようやく劇団と合流することに成功、作られた美女ジョレンタ、愛するドルカスらと再会することができた。絶対の家でのタロス博士の劇は、この世界のカラクリの一端を暗示し、独裁者への非難を含んだ内容だった。劇中の決定的な場面でバルダンダーズは客席に乱入し、騒動の中でメンバーは四散する。
どうにか生き延びた主人公とドルカスとジョレンタは、奇跡的に生き延びた博士とバルダンダーズに出会うが劇団は解散となり、それぞれの道を行くことになる。だが、博士と別れてからはジョレンタの容態は悪くなるばかり。途中、海から川を上ってきた水の中でしか体を維持できない水棲巨人の女性に水に引き込まれそうになったりもする。牛飼いと出会い、さらにクーマイの巫女と出合った一向は、ジョレンタは実は最初に劇団を結成した食堂の娘を博士が整形術を尽くして美女に仕立て挙げていたが維持ができなくなり命運が尽きるところであると知らされた。
植物園のボートで出会ったヒルデグリンと再開し、彼がヴォダルスの手先だと分かっている今、主人公は絶対の家でヴォダルスに頼まれたことはしてきたと伝える。返しの伝言もドルカスが知っていて無事にヒルデグリンに伝わり、此処にようやく主人公は中断されていたスラックスへの旅を再開できるようになるのだが、此処で本巻は終わってしまう。