〇お犬大明神を読む

 図書館の大富豪同心です、21巻。

 今回は、前の大阪奉行、上郷備前守が無役で江戸へ出てきて、次の老中と目される信濃守に取り入るべく八巻封じの献策をします。
 なんと上様の愛犬を拉致して犬探しを南町奉行所にさせ、見つからない(上郷が隠しているのですから当然)のを責任を取らせて左遷させ、代わって自分が南町奉行になり八巻を手下にしてしまうというのです。なるほど、考えたものです。
 それとは別に外出時に溺れている犬を拾ってきた卯之吉は、それを飼い始めます。犬に愛情を注ぐ卯之吉を見て美鈴は悋気を発し八巻家は不穏な気配。犬愛に目覚めてしまった卯之吉は自分で勝手にお犬掛同心を名乗ります。これを渡りに船と、南町奉行所は八巻を上様の犬探しの指揮者とします。
 卯之吉は上様の狆に百両の賞金を懸けるばかりか、誰も犬を見たことがないのでは探しようがないからと似顔絵ならぬ犬神輿を作って連日、江戸市中を練り歩きます。上様のご中臈、静香の方は自分の宿下がりに犬を連れて出て誘拐されたため責任を取らされるのではないかと怯えています。そこに上郷が入れ知恵して南町奉行に責任を押し付けよと言われて上様の代理で南町奉行に至急犬を見つけるように檄を飛ばします。具体的な策を示せと言われて困る南町奉行ですが、卯之吉のお犬様神輿を示すと、もとは町娘のご中臈は良い思案と気に入ってしまいお犬様神輿と踊り出します。
 かくて上郷の陰謀は不発に終わり、最後には犬も無事に見つけ出して卯之吉はまたも手柄を立ててしまいます。